第74話 狙われてる

それから二週間何事もなく時間は過ぎていった。

夏の暑さもピークを迎えムシムシとした湿度が身体にまとわり付き朝から汗が吹き出してしまう不快感に苛立ちが隠せない。

夏休みも残り一週間。

俺は重森との特訓を毎日イメトレして感覚を研ぎ澄ませていた。


その日俺は暑くて外には出かける気が無かったのだが、小山内から電話があって外出せざるを得なくなった。


「もしもし、黒ちゃん?ちょっと最近他校の動きが怪しいって連絡入ってさ、この前の原が発端の話がやっぱりこじれてこっちに攻めてくる動きが出てるらしい」


「やっぱりか…恐らく俺の予想ではけっこう人数固めて来ると思うぞ。こっちも出来る限り集めなきゃ厳しい気がする…」


「あぁ、今日ちょっと会わないか?」


「わかった」


そう言って小山内はバイクで家に迎えに来た。


「悪ぃな黒ちゃん。うちの清原ってのが奴らが不審な行動してるの見かけたらしくてよ。片っ端からうちの連中締め上げて原と黒ちゃんのことを探ってるらしいんだ。黒ちゃんも気を付けた方が良いぞ」


「なるほど…アイツら俺を狙ってんのか…こりゃ重森にも連絡しといた方が良いかな」


「何でかおりちゃん巻き込む必要あるんだよ。あのか弱い可愛娘ちゃんを男の喧嘩に巻き込むのはよせ!」


真剣な眼差しで俺に言った。


「小山内…それは本気で?」


「当たりめーだろ!」


「か弱い…可愛娘ちゃん?」


「おう!」


小山内はなんの躊躇もなくそう言ったのを見て俺は小山内に心の中で御愁傷様と呟いた。

小山内はバイクで海岸まで走らせた。

海までバイクで約30分ほど走った。

潮風が夏の暑さを和らげてくれる。俺達は浜辺に座りさざ波が引いたり押し寄せたりをボーッと眺めながら


「なぁ黒ちゃん、かおりちゃん…前に泣いてたことがあってよぉ…その涙の理由をずっと考えてんだけど…もしかして…お化け屋敷そんなに怖かったのかなぁ…」


俺は思わず肩をガクッと落としずっこける。


「あの重森がお化け屋敷くらいで泣くかよ!だけど…何で泣いたんだ?小山内もしかして…」


小山内が俺の顔を見る。ちょっと動揺してるのか目が泳いでる。


「もしかしてキスが下手で泣いたんじゃ…」


黒ちゃん…俺達がキスをしたとこ見てたのか?


「ん…んなわけ…俺はちゃんと出来たと思うぞ!」


「えー!?小山内あいつとキスしちゃったの?あのモンスターと!?」


「…おっ…おまっ…俺をハメたなぁー!」


「お前マジか?マジで重森と?」


「黒ちゃん…恥ずかしいからあんまり言うなよ…かおりちゃんからしてきたんだよ…その時は…わけもわからず泣いてたから抱きしめたらよぉ…てか、お前モンスターって何だよモンスターって!」


「小山内…あいつには緑色の血が流れてんだよ…」


「なに俺の女にナメック星人扱いしてんだよ!」


「バカヤロウ、ナメック星人の血は紫だ!」

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