第73話 知らない内に
理佳子を送り俺は家へ帰った。
どうしても昨日の原の話が気になり自分の部屋で小山内に電話をかけてみた。
しばらく呼び出して
「もしもし~」
少し寝ぼけた声で小山内が出た。
「あっ…わりぃ…まだ寝てたか…」
「あぁ~…黒ちゃんかぁ…寝てたぞぉ~…どうしたぁ…」
「いや昨日さ、理佳子と夜公園散歩してたら原ってうちの同級生って奴が他校の奴らに絡まれてるの発見してそいつら追っ払ったんだけどな、どうも原って奴が女のことでトラブってるらしいんだわ。もしかしたら近い内に攻めてくるかもしんねーから小山内に言っとこうと思ってな」
「あっ?原?うちの原?」
「あぁ、そいつはそう名乗ってた」
「マジかよぉ…アイツまたやらかしてんのかよ…」
「また?またって常習犯か?」
「アイツさぁ、女遊びが酷くて度々トラブル持ち込んでくんだよ。前に一度説教したんだけど効果無かったみたいだな」
「そういうことか…確かにアイツモテそうだしな」
「あんな奴助ける必要ないよ?」
「そうは言ってもウチに攻めてこられたらそう言ってられないじゃん?」
「んー…そうだな…わかった、一応うちの主力メンバーにはその旨伝えとくわ」
「おぅ頼むな」
「あいよ」
そう言って電話を切る。
これが後に大乱闘事件に勃発することになる。
あっ…そういや重森にどうするか連絡しとくか
「もしもし、重森起きてたか?」
「うん、起きてたよ」
「あの特訓って…この先どうなるの?」
俺は期待と不安の中重森に意見を委ねた。
「もうさ、たかと私が教えるまでも無いと思うんだよね…だってたかと、私と本気でやったらどうなると感じた?」
正か重森からそんな言葉が出てくるとは…
仮にあの特訓の中重森が本気で組み合っていたのだとしたら十中八九俺は重森に勝っていただろう…あのモンスター並の重森がもし本気だったとしたらだが…
「そ…それは…わからない…」
俺はあえてはぐらかした。
「あんた私が女だから敢えて手加減してたけど、もし私とガチでやりあったら勝てると思ってたでしょ?」
たしかに…あれでガチの喧嘩なら勝てたであろう…でも正か…俺があの恐い重森に…んなわけ…
「だからもういいかなって…」
「なぁ重森…それは…マジで言ってんのか?それとも違うのかどっちなんだ?」
薫は少し黙って
「マジだよ…たかと…私が思ってた以上にセンスあったから…だからとても女の私じゃあんたには敵わない…」
「重森…自分で女って言うけど…十分モンスターだぞ…」
「あぁぁぁ!私はか弱い女なんだよ!どういう目してんだよ!小山内は私をちゃんとか弱い女扱いしてくれるぞ!」
「いや、か弱いってのは多分…理佳子くらいのことを世間一般的には言うけど…」
「…フン、私だって乙女なんだよ…」
「ごめんごめん…そうでしたそうでした…重森も一応乙女だよなぁ」
「一応付けんなバーカ!」
こんなじゃじゃ馬が乙女なんて甚だ笑わせてくれるよな。
そう思いながら聞いていた。
「重森…」
俺は真面目な声のトーンに戻り
「ありがとな」
薫はその声に切なくなるのを感じた。
「たかと…」
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