第72話 理佳子、転校の提案
「おばさん…そんな…でも…」
明らかに理佳子はその言葉にまんざらでもない感じだ。理佳子って…ほんと一途なんだな。
「ほら見なさい!理佳ちゃんだって母さんの考えに賛同してくれてるよ!あとはあんた次第なんだってば」
「いや、だけど理佳子の両親だってだな…」
「たかと君…私の親は大丈夫だと思う。きっとたかと君を会わせたら納得してくれると思うの…でも…たかと君自身が私とじゃって…思うなら…」
これは何の心理戦だ?そこまで言われたら今ここで俺が決断しなきゃ気まずい空気だろう…
母さんめっちゃ悪い顔してるし…
どうしたら良いんだ…俺まだ結婚なんて何も考えてないし、理佳子と付き合い出して日も浅いってのになぜ?
「理佳子…俺は理佳子じゃダメだなんて一言も言ってないぞ!むしろ理佳子なら俺は大歓迎だ!ただ今それを決断するには時期尚早かなと」
理佳子は少し目に涙を浮かべているように見えた。
「理佳ちゃんがそこまで思ってくれるなら学校もこっちに転校したら良いのにねぇ」
母さんがそんな無責任なことを言い出す。
「おばさん…私、親にそれとなく相談してみようかとも思ってるんです。いざとなれば薫の所にも行けるし、動機は不純かも知れないけど…でもやっぱり…」
俺はその言葉を聞いて驚いた。
「え!そうなの?」
「そりゃあ良いねぇ!理佳ちゃんがまたうちにちょくちょく遊びに来てくれたらおばさんも凄く嬉しいし!だってこっち来て全然知り合いも居ないから話し相手がなかなか居なくてねぇ…」
「理佳子!是非親に相談してくれよ!俺もお前がこっちに来るのすっげぇ楽しみだ!」
俺はすっかり舞い上がってしまった。
「うん、まだどうなるかわからないけど言ってみるつもり。たかと君がそれで喜んでくれるかどうかわからなかったから言わなかったの…」
朝食を終え俺達は部屋に戻った。
二人がベッドに座った瞬間理佳子の携帯に着信。
それは理佳子の母親からだった。
「もしもしお母さん?」
「理佳、すぐ帰って来れる?」
「え?どうしたの?」
「お爺ちゃんが倒れて病院に搬送されたって電話来て今お母さん病院に居るんだけど、もうお爺ちゃんかなり危ないみたいでこれが最期になるかもって…だから急いで帰って欲しいんだけど」
「うん、わかった。なるべく早く戻るね」
そう言って電話を切る。
俺は電話のやり取りを全て聞いていた。
「たかと君ごめん…お爺ちゃんが…」
「理佳子、急ぐぞ!」
俺はすぐに立ち上がって理佳子を送る支度をした。理佳子も用意して15分後には二人とも用意が出来た。
慌てて理佳子が母さんに挨拶をして俺達は駅に向かった。
駅のホームまで俺は付いていき理佳子に
「またいつでも会えるからいつでも連絡くれ」
「うん、ありがと」
その時電車がホームに入ってきた。電車のドアが開き理佳子は小さく手を振りながら電車に乗り込んだ。
俺は理佳子を乗せた電車が遠退いて行くのを見守った。
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