第70話 母さんと理佳子
俺と理佳子は家に帰り部屋のベッドで並んで座った。
「たかと君、お願いだから私の知らない所で怪我しないでね…凄く心配。さっき原くんって人がまた攻めてくるかもって…」
「あぁ、そうなるかもな。でも、いざとなれば小山内も居るし、アイツけっこう出来る男だからな」
「私の知ってるたかと君はそんなことを言わなかったのに…やっぱり変わっちゃったね…」
理佳子が寂しげに言うのを俺は複雑な気持ちで聞いていた。
これも全てお前を守れる男になりたいがためだ。いつかもしかしたら理佳子にもわかってくれる時が来るかもしれない。
そう自分に言い聞かせていた。
時計に目をやるともう夜中の1時を過ぎていた。
「もう寝るか?」
「うん」
そう言って二人はベッドの布団の中に入り俺の腕枕の中で理佳子を抱きしめながら
「理佳子…」
理佳子はスッと布団の中から顔を出して
「たかと君…」
そう言って俺のキスを待つ。
俺は理佳子の唇にそっとキスをしてぐっと抱き寄せた。
「お休み、理佳子」
「お休み…」
不発ではあったがお互い心は十分満足して眠りに落ちた。
次の日の朝
俺は自然に目が覚めてまだ視界がボヤけてなかなか目が開かない。
朝だというのに窓の外は突き刺すような日差しで既に気温がかなり上がっていることをうかがわせる。
隣にいる理佳子…が居ない!
今何時だ?時計に目をやるがハッキリと見えないので目を擦った。
んー…7時?ちょっと回ったくらいか…
俺はベッドから出て部屋を出て階段を降りていくと母さんと理佳子の話し声が聞こえてきた。
「天斗はねぇ、優しいのは優しいんだけどちょっと鈍いところあるからねぇ…あの子を理解してくれる娘が現れるのか心配でねぇ…」
「たかと君はとても素敵な人です。おばさんが心配されるようなことはないと思いますよ」
そっとリビングからダイニングキッチンを覗くと二人で朝ご飯の用意をして台所に向かっていた。
二人で俺の噂をしてるらしい。
「理佳ちゃん、ほんと天斗をお願い!おばさん心からあなたに頼むわ」
「おばさん…私…」
「おばさんね、天斗が理佳ちゃんを俺のお嫁さんにするの~ってよく言ってたから本当にそうなったら良いなぁってずっと思ってたのよ。でも、天斗が急に理佳ちゃんとはもう遊ばないってあの事故以来頑なに言い張るから凄く残念な気持ちになったのよ。それで理佳ちゃんもう遊びに来なくなったでしょ?」
「おばさん…」
「それが10年もの歳月を経てまたこうしてあなたをここへ連れてきてくれて…しかもこんなに立派に成長されておばさんもう…」
そう言って母さんが段々と涙声に変わっていった。
「お…おばさん?大丈夫ですか?何か私までもらい泣きしてしまいそう…」
母さんは涙がこぼれるのを指で抑えて
「理佳ちゃん、ほんとおばさん理佳ちゃんのことを好きなのよ。だから、天斗を…」
「おばさん…私もたかと君のことを愛してます。でも…たかと君こっちに来てから少しずつ…私の知ってるたかと君じゃなくなって来てる気がして…」
「あら、天斗、理佳ちゃんに何かしたの?」
何かしたの?って…そりゃ昨日ちょっといかがわしいことはしたかも知れないけど…理佳子を傷つけるようなことはしてないと思うけど…
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