第69話 波乱の幕開け

理佳子が遠くからそれを見て急に崩れ落ちペタんとその場に座り込んでしまった。


「理佳子~、大丈夫かぁ?」


俺は心配になり呼びかけた。

理佳子は立ち上がり俺の方へと力なく歩いてくる。


「たかと君…心配させないでよぉ…」


この小さくて可愛い女子を原が見て


「黒崎さん、この娘は?」


「あ?俺の女だ」


原はまじまじと理佳子を見て


「はじめまして、黒崎さんの友達の原和成ッス」


理佳子はそれを信じ


「はじめまして、清水理佳子です。よろしくお願いします」


「おいおい、初対面の俺に友達はないだろ!」


「いやいや、それは無いッスよ…いつも小山内君とみんなで一緒に歩いてるでしょうが…黒崎さんの記憶力の問題ッスよ…」


そう言われてみればそんなような気もする程度にしか思えない。


「いや、ほんとありがとございます。あいつらの一人が俺の女に手を出すからちょっとシメてやったら人数で脅してきやがって…一応ウチとは昔から何かと揉め事絶えない奴らなんすけどね」


原からいろいろ聞いてると、どうもウチの学校とは先輩達の代から何かと揉めてるらしい。

俺がこっちに来てからそんなトラブルはあるようには見えなかったが、これがキッカケとなり何か一波乱ありそうなそんな予感がする。


「またアイツら攻めてくるかも知れないからよろしくお願いしますね!」


「お願いしますね!…じゃねーよ!そもそもお前が持ち込んで来た問題なんだからお前が解決しろよ!」


「またまたぁ…ウチの看板なんすからお願いしますよぉ~」


ウチの看板…その言葉に俺は正直悪い気はしていない。むしろそういう英雄扱いに俺は憧れていた。


「仕方ないなぁ~、何かあったらとにかく召集かけろ」


「オッス!」


そう言ってこのお調子者の原は帰っていった。

理佳子が俺の安請け合いに心配そうな眼差しで


「たかと君…」


「心配かけてごめんな。家帰ろうか?」


「うん、たかと君…前は…いつも謝ってばかりだったのに…」


「理佳子…やっぱり俺もお前に何かあったとき絶対に守ってやれる力が無いとって思うんだよ…」


「でも…」


「わかってる…無茶はしないから心配すんな」


「うん…でもね…薫の…」


そう言いかけて理佳子は止めた。


「ん?重森がどうした?」


「ううん、なんでもない…」


理佳子が言いかけた言葉が凄く気になる。

何せ俺を強くしてくれたのはその張本人なわけだから、重森が俺に言い続けた言葉の真意がそこにあるのではと勘ぐってしまう。

そう言えば…明日からの特訓って…どうすんだろ?重森に今連絡するわけに行かないからなぁ…とりあえず明日は無しだな。

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