第68話 ハッタリも力なり

集団の一人が真ん中の囲まれてる男に胸ぐらを掴みかかり思いっきり拳を振りかぶって殴ろうとしたその瞬間…


「おーい!大丈夫かぁ?」


俺がでっかい声で叫んだ。

横にいた理佳子はビクッとして驚く。


「たかと君…やめて!お願い!行こ?ね?」


恐怖が限界なのか身体を震わせながら俺の袖を引っ張りそう言った。

俺は理佳子に優しく微笑んで


「理佳子、大丈夫だよ。理佳子は隠れていろ。な?」


「たかと君…」


今にも泣き出しそうな声で涙を目に浮かべながら心配そうに俺を見つめている。

公園の中の集団から


「あぁ?誰だてめぇ」


「だぁーれかなぁ?出ておいで~」


俺を挑発する。

俺は理佳子の頭を軽く撫でて公園の中へと歩いて進んでいく。

すると囲まれていた男が


「あっ!黒崎さん!」


俺を見て驚いた表情でそう言った。

よく見ると何となく見たことあるような気が…


「えっと…誰だっけ?」


俺は誰だか思い出せずに尋ねた。


「俺っすよ、2年2組の原和成(はらかずなり)っすよ!」


「ごめん、全っ然思い出せねーわ」


原和成と名乗る男はズルっとこけた。

この原和成と名乗る男はかなりの美形でどちらかというと中性的な鼻筋の通った顔立ちで、目は二重のパッチリと綺麗な目をしている。唇は上唇が少し薄く、下唇の方が少し厚くて髪型は前髪を自然に斜めに流している。それほど長くもなく短くも無いぐらいでストレート。綺麗にまとめられている。身長はだいたい180センチに近いぐらいだろうか?かなりモテそうな印象を受けた。

集団から次々と声が飛んで来る。


「だからてめぇ何なんだよ!」


「てめぇこいつの仲間か?」


「何でも良いわ、一緒にやっちまおうぜ」


その中の一人が


「いや、ちょっと待て黒崎って言わなかったか?」


「あっ?黒崎?…黒崎…もしかして…」


そう言って集団の空気が一気に変わった。

ざわざわと黒崎の名前に動揺しているようだ。

俺は集団の中へと入って行った。

重森からハッタリも自分を大きく見せる為の効果があると聞いていたから、ちょっとビビりながらもそれを必死に隠して本物のふりをして原と名乗る男の隣に立った。

集団の男たちはあまりにも堂々とした俺に少し怖じ気づいてるように見える。


「んで?何やってんの?」


俺が原なる男に問いかける。


「こいつら他校の奴らなんすけどとんだ言いがかりで絡まれて今こんな状況っす」


「そっか…んで?お前らはどうしたいの?」


俺はこのまま解散してくれることをちょっぴり期待しながらも、自分の力を試してみたい気持ちもちょっぴりの複雑な気持ちの中で相手の反応を待った。

集団の一人が


「黒崎ってよ…俺の記憶が正しければ他県の奴だよな?こいつ…偽もんだろ?」


「だよなぁ…」


そこへ原なる男が


「残念だったな!2年からうちに転校してきたんだよ!ほら、俺に手を出したらこの黒崎さんが黙ってねーぞ!」


ニヤリとしてそう言った。


「いや、誰もそんなことは言ってねーけど俺…」


原が俺に向かって泣きそうな演技をして


「黒崎さん、ここに来てそれは無いっすよぉ~」


俺が辺りをぐるっと見回すと一斉に集団が一歩後ずさった。

そして俺は腹に精一杯の力を入れて


「失せろぉ~!!オラァ~!!」


と一喝した瞬間、集団が怯んで一人また一人と走って逃げたした。

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