第67話 心の覚醒

いつまでもこうしてウダウダしてても理佳子に申し訳ないので俺は部屋の電気を付けて理佳子に


「なぁ理佳子、気分変えるためにちょっと外散歩しに行かないか?」


理佳子を誘い出した。


「うん、行こう」


俺と理佳子はラフな服を着て静かな夜の道をぶらぶらと歩き出す。


「理佳子…お前ほんと優しいなぁ」


「えぇ?普通だよ。全然普通。たかと君の方こそ凄く優しいよ」


俺は理佳子の優しさに救ってもらった。やっぱりこんな健気な娘を嫁に出来たら幸せだろうな…そんなことを想いながら歩いていく。

そして公園の横の道に差し掛かった時若い男子数名が何やら言い合いをしてる声が聞こえて俺たちは立ち止まった。ざっくり一人を囲んで10人近く居るような感じに見える。

これは…恐らく何かしらトラブルが起きて正にこれからこの囲まれた人物がリンチに会うであろう雰囲気が漂っている。

全員私服で歳がいくつぐらいなのかわからないが、だいたい声の感じや体格等から自分らと同じ高校生ぐらいだろうと推測出来る。

俺と理佳子は立ち止まり遠目にそれを見ていた。

理佳子が


「たかと君…恐い…行こう?」


そう言ってその場から離れようと俺を促す。

俺は内心凄くドキドキしながらも


「ちょっと待って…あいつもしかしたらこれからリンチに会うかも知れないじゃん…やべぇよ…」


「でも…たかと君…」


そう言って俺が止めに入る力が無いと言わんばかりの不安な表情をして泣き出しそうな顔をして俺を見つめる。

俺は理佳子の両肩にポンと軽く手を乗せて


「わかってるよ、ちょっと様子見るだけだ。最悪警察に通報すりゃいいんだろ?」


そう言って理佳子をなだめた。

しかし俺は重森との地獄の特訓の成果を試してみたいという不思議な衝動にも駆られている。

あの重森が息を切らし恐らく全力で攻撃してきた動きに付いていってそれを交わし寸止めで何度も重森に俺の攻撃を繰り出せた技…たった二週間そこそこだったが毎日毎日朝から晩まで鍛えてもらった成果は必ず報われているはずだ…きっと大丈夫…きっと行ける。

俺はそう手応えを感じずにはいられなかった。

少し前の俺なら絶対にここはさっさと見なかったことにして立ち去っていただろう…でも重森に何度も言われたあの言葉…


どんなことがあっても絶対理佳子を守れる力を付けろ!男は女を守らなくちゃ行けないんだよ!

この言葉…なーんか俺の中に物凄く根強く突っかかって来るんだよな…多分これも俺の内にしまいこんだトラウマの一部なんじゃないだろうか?そんな思いがしてならない。

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