第55話 抗うことの出来ない気持ち
「あぁ~楽しかった」
理佳子は満足気にそう言った。
「すげぇ良かったよねぇ~」
小山内も痛みを堪えながら満足したようだ。
「次何乗る?」
理佳子はまるで子供のようにはしゃいでいる。
「絶叫系は小山内全部ダメなのか?」
「んー…俺はパスだな…俺は待ってるから行ってきて良いぞ」
「じゃあ私も待ってる」
意外にも薫がそう言った。
「え?良いの?かおりちゃん俺に気を遣わず行ってきて良いんだよ?」
小山内は心と裏腹にそう言った。
「じゃあ理佳達ととりあえず別々に行動する?後でどこかで落ち合うことにして」
「え?それで良いの?」
理佳子が言う。
「ま、ランチまで理佳の好きな絶叫系乗っておいでよ。私は小山内とテキトーに遊んでるから」
そのときの小山内の口から心臓が飛び出しそうなほどの喜んだ顔が忘れられない。
「じゃあそういうことで行こか?理佳子」
「うん、じゃあまた後で連絡するね~」
そう言ってお互い別々の方角へと歩きだした。
「ねぇねぇかおりちゃん…何乗る?」
「別に…理佳の付き合いで遊園地なんか来たけど…あんまりこういうところはなぁ…」
「え?じゃあどうする?」
もしかしてかおりちゃん…俺達別行動にして何か誘ってるのか?
これはもしかして…もしかして…何か俺に神様が大きなチャンスを与えて下さったのか?
「じゃ…じゃあかおりちゃん、ベンチに座ろっか」
「そうだね」
そう言って辺りを見回して薫の手を引いて
「あそこにベンチあったわ、行こ」
小山内は薫をベンチに連れていき二人は座った。
「かおりちゃん…前にも言ったけどさ…俺じゃダメかな?」
小山内はドキドキしながら薫の横顔を覗いた。
「何が?」
「何がって…俺がかおりちゃんの彼氏にはなれないかなって…」
薫は黙って前を見つめている。
しばらく沈黙して
「今はまだ…返事は出来ない…自分でもよくわからないんだけど…」
そう言ってまた黙ってしまった。
「いや…いいよ…すぐにじゃなくていい。かおりちゃんの気持ちが整理出来たら返事聞かせて欲しい」
薫は黙って頷いた。
そして薫が小山内の手を握った。
「今日だけは………私の彼になって…」
「かおりちゃん…うん、わかった。一日彼氏ね」
薫の中の複雑な想いが自分にも信じられない行動を取らせてることに違和感を感じながらも淋しさに抗えない。
「小山内…ありがと…」
小山内はなんのことかわからないがとりあえず
「かおりちゃん…お、おぅ」
そう答えた。
たかと…
天斗と理佳子が手を繋いで仲良く歩いていく後ろ姿を思いだし、どんどん取り残されてく自分の気持ちと、決して願ってはいけない自分の願望が薫の頭を悩ませる。
小山内は私を必要としてくれてる…でも、ここで小山内に逃げるのはあまりに卑怯だ…この気持ちを切り換えるにはどうしたらいいんだろ…
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