第56話 交錯する想い

昼12時を回った。


小山内と薫はベンチで手を繋いだまま他愛ない学校での話や薫の趣味についてなどを話していた。

しかし薫は会話に集中出来ずにいた。


「そろそろ理佳に連絡取ろうか?」


「そうだね、そろそろ腹も減ったしどこかでランチしたいよね」


薫が理佳子に電話をかける。


「あっ、理佳?そろそろランチにしない?」


「うん、私達もちょっとお腹空いたねって話してた」


「じゃあ食事出来るとこ向かうから来て」


「うん、わかった」


電話を切って小山内、薫ペアと天斗、理佳子ペアは食堂に向かう。


四人それぞれ注文を終えテーブルを決め椅子に座った。


理佳子が


「薫達は何か乗ったの?」


「ううん、ベンチで話し込んでた」


「えー、勿体ない。食べたら何か一緒に乗ろうよ」


「うん、そうだね」


理佳子の為に薫は合わせている。

四人は食事を終えて


「じゃあ、何乗る?」


理佳子が言った。


「観覧車どうかな?」


小山内が続いた。


「観覧車良いね!観覧車乗ろうよ」


二人ずつ別々に観覧車に乗った。

薫は天斗と理佳子の姿をずっと目で追う。


たかと…なんかヤバい…自分がコントロール出来なくなってきてる…どうして?

なぜあんな奴のことを…まるで私じゃない…

薫がどんどん情緒不安定に陥っていく。


その時


「かおりちゃん?どした?なんか凄くボーッとしちゃって…」


薫は我に返り


「ごめん…なんかちょっと気分がすぐれなくて…」


「大丈夫か?これ降りたら少し休もうか?」


小山内が気遣う。


「うん、ごめん…」


観覧車が下まで降りたところで


「黒ちゃん、かおりちゃんが気分悪いみたいだから俺ちょっと休ませて来るわ」


小山内が言った。


「薫大丈夫?」


「ごめん…ちょっと今日体調悪いみたい…」


「重森…日陰で休んだ方が良いみたいだな」


そう天斗に言われたとき動揺して涙が沸き上がりそうになりクルっと振り返って


「ごめんちょっと休んで来るね…」


そう言って背中を向けたまま歩き出す。

すぐに小山内が追いかけ


「俺かおりちゃん見てるから二人で頼む」


そう言って薫の肩を抱きかかえ休める場所を探し歩いていった。


「薫…」


理佳子は複雑な表情でその背中を見つめる…


「あいつ大丈夫かな?」


「たかと君…」


理佳子はそれ以上は言わなかったが、薫の様子を見て全てを悟っていた。

薫との付き合いが長いのでお互い手に取るようにお互いのことがわかる。

わかるが故にお互いが辛い…


理佳子はたまらなく不安になる…薫の気持ちを考えると胸が痛い。

私…いったい…どうしたらいいの?たかと君は…

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