第38話 もう限界

理佳子の言う[思い出して欲しいこと」とはいったい何のことなのか…どうしてもわからない…

何故俺は記憶が飛んでしまったのか…

きっと理佳子は全部覚えていて知っているのだろう…俺が何故トラウマになるような出来事があったのか…


「たかと君…薫のことをどう思う?」


「え?どうって…」


「薫はたかと君をどんな風に見てると思う?」


………何急にそんなこと聞くんだよ。

あれは完全に女じゃなく男だろ!

きっと俺のことを臆病者の弱虫ぐらいにしか思って無いだろうな…


「んー…頼りない…弱虫とか…そんな感じじゃないかな…」


「薫は弱虫が嫌いってずっと言ってた…でも…なんか…ちょっと変わっちゃったのかな…」


「理佳子?何が言いたいんだ?」


「ううん…ゴメン、何でもないよ」


「なぁ…理佳子…」


「うん」


「理佳子は…強い男の方が好きか?」


「フフフッ…私は…強くなくてもいいの。優しいたかと君が好き…」


「そか、ありがとう。俺、いつかどんな時でも理佳子守ってやれる強い男になるつもりだ。どんなことにも屈しない強さを手に入れて…お前を守ってやる!」


「………たかと君…変わったね」


「え?そうか?」


「うん…たかと君…そっち行って変わったみたい…薫の影響なのかな?」


俺はそんなこと考えたこともなかった。

俺は変わったのか?

確かに俺は強くなんてなりたいと思ったこと無かったな…知らず知らず小山内や重森の強さ目の当たりにして影響されてたのかな…


「そうかもな…最近立て続けに色んなことあったからな…」


たかと君…私の知らないところで何が起きてるの?薫とずっと一緒に行動してるの?

どんどん私の知らないたかと君が増えていって…何だか胸がざわついてくる…

いつもいつもたかと君を見てたのに…今は全然たかと君を見ることが出来ない…苦しい…戻って来て、私のたかと君…


「理佳子?」


「うん…」


「どした?大丈夫か?」


「うん…」


自然と涙が出てきちゃった…何でだろ…たかと君と想いは通ってるはずなのに…なんか私だけ取り残されているような…幸せなはずなのに何故か…涙が止まらない…


「理佳子…どしたんだよ?」


「ゴメン…ゴメンなさい…私…変だよね…なんか急に涙が出てきちゃって…」


「わ…悪い…俺…変なこと言っちゃったか?」


「ううん…違う…なんか…ずっとたかと君の姿見てないから…ちょっとおかしくなってるのかも…」


「理佳子…」


今すぐにでも会いに行ってやりたい…今すぐ抱き締めて、安心させてやりたい…理佳子…お前…そんなに強い女じゃないもんな…ゴメンな…


「ゴメン…せっかく楽しい時間なのに…ゴメンね…」


「理佳子…本当に大丈夫か?」


大丈夫じゃないよ…もう壊れそうだよ…淋しくておかしくなりそうだよ…薫がたかと君の側に居られるのに、どうして私はひとりぼっちなの?

会いたい…淋しい…もう切ないよ…もう限界だよ…

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