第39話 男の優しさ
「ゴメンね…たかと君…大丈夫…ちょっとセンチになっただけ…早くデートの日が来るといいな…」
理佳子は精一杯強がって見せた。
もう心は崩壊寸前だった。
「理佳子…無理…してるだろ…」
理佳子は俺の言葉に堰を切ったように号泣してしまった。
「理佳子?理佳子大丈夫か?」
俺は不安になる。
理佳子は泣き続けて何も言わない。
どうしたらいい…どうしたらいい…考えろ…考えろ…よく考えるんだ…
そうだ!
小山内確かバイクの免許あるとか言ってたな。
あいつに頼んで連れてってもらうか…
「理佳子!ちょっと待ってろ、これからなんとかしてお前ん家行く!ちょっと遅くなるかも知れないけど待ってろ!そっちの住所教えてくれ!」
理佳子はたかとの信じられない言葉に
「たかと………君………どう………して………?」
「理佳子が心配だからに決まってるだろ!」
これが…これがたかと君の優しさ…そうだった…たかと君はいつも優しかった…このタカの面倒を見てた時も、私を庇って助けようとしてくれた時も、お年寄りが重たい荷物抱えて階段登ってる時荷物を持って上げて後ろから背中押してあげた時も、財布落とした人が困ってて帰りの電車賃を上げた時も…いつもいつも優しかった…
だから私はたかと君が大好きだった。
そのたかと君と今は心が通いあってる。
たかと君を困らせちゃいけない…
「たかと…君…私は…大丈夫…」
泣きながら言った。
「だから無理しないで…ありがとう…」
「お前が大丈夫でも俺はお前が心配なんだよ!」
たかと君…あんまり私を泣かさないで…そんなに優しくされたら…私…弱くなっちゃう…
「たかと君…」
「理佳子、住所教えてくれるな?」
俺は優しくそう言った。
「うん…ありがとう…」
そして理佳子の住所をメモした。後は小山内を説得して…
「理佳子、待ってろ!これからなんとかそっち行くからな!」
「うん…」
電話を切ったあとタカを抱きしめタカの顔に何度も何度もキスをした。
たかと君が転校してからずっと顔見れなかったけど…やっと逢えるんだ。
理佳子の身体はまるで宙に浮いてるようなフワフワとした感覚になっていた。
でも、どうやってこんな遠くに来るんだろ?
小山内~小山内~出てくれ~、早く電話に出てくれ~!
「あっもしもし」
「あっ!小山内か!ちょっと頼みたいことがある!」
「え?どうした?」
「悪いけどちょっと付き合って欲しい所がある!」
「おぅ、別に良いけど」
「ちょっと申し訳ないが、隣の県までバイクで連れてってくれ!」
「あ…あぁ…あーーーーー!?」
「無理を承知で頼んでる!切羽詰まった事情なんだよ!頼む!」
「お…おぅ…そうか!そういうことならわかったよ!今からそっち行く!」
「悪いな、ほんとありがと!」
「おぅ!待っててくれ」
「おぅ」
あいつバカだけど良いやつなんだよな…
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