第36話 絶望の淵
高校二年一学期終業式
「あぁ…明日から夏休みかぁ~…重森ちゃんと会えなくなるなぁ…」
小山内がさりげなく重森に聞こえるように言った。
俺は重森の顔をチラッと見た。
重森は相変わらず無言無表情で歩く。
「なぁ…重森…あのさ…夏休み予定あるか?」
俺はわざとらしく振ってみる。
「あるよね?毎日」
え?毎日?どゆこと?
重森は俺の方を睨んで悪い顔をしてる。
「毎日って?」
「前に言ったよね。私が鍛えてあげるからって」
俺は立ち止まって重森の腕を掴んで引っ張っていく
小山内は不思議そうな顔で眺めている。
「あのさ、それ夏休み中ずっと?」
「そうだよ」
重森はニヤッとして言った。
「それ俺は何も了承してないけど…」
「強制参加だから」
ま、まさか地獄の日々が足音もせず近づいていたとは夢にも思わなかった。
「は…はぁい…で…でもさ、そういうの小山内の前で言うなよ!」
そのとき小山内が近寄って来て
「なーにコソコソ話ししてんの?」
「あ…いや、その…みんな夏休み予定空いてるかなぁって…」
「あっもしかしてダブルデート………ハァ~~~~~~」
小山内はやっちまった!という顔で口を大きく空け俺をチラッと見る。
「重森ちゃんから誘われるまで秘密にしておく約束だったのについ口が勝手に………あーーーーー~~…」
小山内はまたもや口に手を当てやっちまったという顔をしてる。
俺は思いっきり小山内を睨み付けた。
ダメだこいつは…頭が悪すぎる…
重森も俺をチラッと見た。
「あのさ、昨日理佳子に電話したらさ、夏休みこっちに来るって言うから重森と小山内と四人で一緒に会おうかって話しをしてたんだけどどうかな?」
俺は先手を打って重森に切り出した。
「いいよ、いつ?」
「え~と…重森はいつが都合いい?てか、理佳子と予定合わせて教えてよ。それに俺達も合わせて空けとくから」
「わかった。じゃあ理佳に電話しとくわ」
「重森ちゃん、お…俺と………」
「じゃあね、あっ…あんた番号教えなさいよ」
重森が俺に電話番号を聞いてきた。
当然小山内はこの世の終わりのような切ない表情で悶えている。
「お…俺は…む…無視ですか?」
小山内は完全スルーされている。
「は…はい…えーと…」
俺は重森に携帯番号を教えた。すぐに重森はかけてきて俺は重森の番号を登録する。
「お…俺には…俺には…どうして…俺だけ…どうして…」
結局重森は小山内がまるで存在しないかのように行ってしまった。
俺は小山内の肩をポンと叩き
「まぁ、あれだ…ああいう読めないところが良いんだろ?もう少し打ち解けるまで待て!」
俺は慰めたつもりだが小山内は絶望の淵に立たされた表情をしてる。
「なんで…なんで…なんで俺だけ…グスン…」
やっぱこいつめんどくさ…
てか、どいつもこいつも個性強すぎてめんどくさ…
それより…明日から毎日地獄が待ってんのな…
俺の方が絶望の淵に立たされてるよ…
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