第9話 結局俺は…

俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせる…


ヨシ!頑張ろ…先ずは…何て言おう…


手紙ありがとう、清水の気持ち気付いてやれなくてごめんな…すげぇ嬉しかったよ。もし良かったら俺と付き合ってくれないか?


ヨシ!これで行こう!ずっと俺のこと見てくれてたんだよな…ヨシ、頑張るぞ!気合いだ!


俺は震える手で番号を押した。そして…


最後の発信ボタン…いっけぇ~!ピッ…


ハァーーーーー押しちゃった押しちゃった!メッチャドキドキ~~~!


スゥーハァースゥーハァースゥーハァー…必死で気持ちを落ち着かせる…






一方清水の方は




黒崎くーん!黒崎くーん!


べッドに寝っ転がり黒崎のことを考えて枕を抱き締めコロコロ転がっていた。




着信音…




ビクッ!驚いて飛び上がる。


側に置いてある携帯がバイブしながら鳴り続けている…恐る恐る携帯に手を伸ばして画面を覗く。

知らない電話番号の表示…

ゴクッと生唾を飲み込み通話ボタンを押す…


ゆっくり耳に当て…


「もしもし…」


弱々しい声で電話に出る…








うわぁ繋がっちまった…こ、これは…やっぱり清水の声か!?


「もしもし…俺だけど…」


「………」


「もしもし…清水か?」


「………うん。」




やっべぇ~、頭のなかが真っ白になっちまった…

何て言えば良いのかわかんねぇ~…


「あっ…あの…清水か?」


「うん…」


なに二回も同じこと聞いてんだよ…パニクり過ぎだろ!


「清水…か?…」


「うん…」


だから何回確認する気だよ!落ち着けぇ落ち着けぇ!


「あの…さ…手紙ありがとう…」


「うん…」


「あの…気持ちすげぇ嬉しかった…」


「うん…」


「あの…さ…あの…ありがとな…」


「うん…」


「じゃあ、またな…」


「うん…」


「じゃなくて…」




「あの…」


「ん?」


「猫…」


「猫?」


「前に黒崎君が探してた猫…」


「え?猫?何でそんなこと…」




ハァーーーーー!あれも見てたのかよ清水!


「黒崎君が探してた猫…私が…飼ってる…」


お…お前ってやつは…どんだけ俺のこと見てくれてたんだよ!


「そ…そうだったんだ…てっきり保健所に連れてかれたかと思ったりして…でも、清水が拾ってくれたんなら安心したわ」


「うん…」


「何か困ったことあったらこの番号に電話してくれよな…」


「うん…」


「………じゃ、またな………」


「うん…」


そして俺は静かに電話を切った…


てか、俺は結局何やってんだよ…結局何も言いたいこと伝えてねぇじゃん…








まだドキドキしてる…


黒崎君…かけて来てくれた…それだけでもすっごく嬉しい…私のこと気にかけてくれた…何かあったら…電話してって…


「タカ…おいで!」


猫のタカはミャアオと鳴いて側に来た。

抱き上げてギュッと抱き締める。


ミャア~と甘えて鳴く


お前のこと、たかと君に話したよ。


やっと話せた…お前もたかと君のこと好きでしょ?


ミャァオ


たかと君…きっと覚えてないんだろうな…

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