第6話子猫

雨に濡れた子猫が身体を震わせながらミャアミャアと鳴いている。

寒さと空腹で苦しいんだろう…

きっとこの子猫は育児放棄されたんだ。このままではいずれ死んでしまうだろう。

一度家に帰り小皿とミルクを持って子猫の所へ戻った。

小皿にミルクを入れ子猫の側に置いた。

子猫はよほど腹を空かしていたのかすぐにミルクに飛びついた。

ミルクを飲み干してまだ足りないよと言わんばかりにこっちを見てミャアミャアと鳴き出した。更に小皿にミルクを追加した。

子猫の腹はパンパンになりこっちにすり寄ってきた。

子猫を抱き上げ雨の当たらない庇の下に子猫を運んでタオルで身体を拭いてやった。寒いだろうと思い子猫を抱っこして身体を擦り温める。

子猫は気持ち良さそうにされるがままになっている。

雨が止むまで子猫を擦り続けた。

そして雨が止み日差しが差してきた時に子猫を下に下ろしそっと子猫の頭を撫でその場を立ち去った。




毎日毎日学校を下校してその子猫の所へミルクや魚の缶詰めを持って行く日々が続いた。

その一部始終を清水理佳子はずっと陰で見ていた。



ある日同じように子猫の所へ向かった時に子猫が居ないことに気付きあちこちを探し回った。

近くの縁の下や狭い場所有りとあらゆる場所を覗き込んでは声をかけた。

何処にも居ない…もう三時間も探し続けた。

きっと誰かに拾われたのかも知れない。

その日は諦めて家に帰った。

そして次の日もその次の日も子猫の姿を探したがやっぱり何処にも居ない。

そして諦め寂しそうにその場を去った。




「彼ね凄く優しいの。優しいんだけどその子猫を家に連れて帰ることは出来なかったみたいで…だから私が家に連れて帰って飼うことにしたの」


「えっ?それ黒崎君知ってるの?」


「ううん、知らないよ。」


「言わなかったから何日も探しに来たんじゃないの!」


「うん、そうだね」


「そうだねって…」


ほんとこの娘よくわからないわ~…事情説明してあげれば何日も心配せずに済むのに…なんていうか…ある意味恐いわ…


「てかさ、そんな毎日毎日黒崎君の行動追ってたわけ?」


「フフフッ…」


「フフフッじゃないよね?それってストーカーじゃん!ずっと黒崎君のこと見てたの?」


「フフフッ…フフフフフッ」


だから恐いって…理佳子ってこんな不思議系だったんだ…


「子猫の名前…タカって付けた。黒崎君が可愛がった猫だから黒崎君の代わりに…フフフッ」


ちょっとこの娘わからんわ~…乙女過ぎて…

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