第61話 その優しさに触れて

「痛い……」

 アカリが目を開けていた時と同じころ、イチカに触れた時、よろけ転んだヒナタが体を起こしていた

「足、擦りむいてる……」

 左足を触ると少し膝が赤くなって少し擦り傷になっていた。落ち込みつつも傷口を払って、はぁ。とため息つくと、やっとさっきまでいた場所とは違い薄暗く来たこともない場所にいることに気づいた

「アカリ、イチカどこ?フタバもいる?」

 キョロキョロと辺りを見渡してみると、真っ暗な視界の中、誰かがいる気配もなく更にしょんぼりとうつ向きながら、ゆっくり立ち上がる

「動いてもいいのかな……」

 静かな空間に恐怖を覚えつつも、そーっと一歩足を出してみる。

「アカリ……お母様どこ?」

 か細い声で呼んでみても返事はなく、ヒナタの声だけが響く。声をかけ続け歩いていると、薄暗い視界の中、体育座りをした女の子が突然現れた


「どうしたの?」

 慌てて駆け寄り声をかけたヒナタ。近寄ってよく女の子を見てみると、髪は長く背の低い女の子は顔を伏せたまま動かない

「転んじゃったのかな……。大丈夫?お名前は?」

 身体中を見て怪我をしていないか確認している間も伏せたまま何も言わない女の子。段々と不安になってくヒナタがそっと女の子の手に触れた。それでも何にも言わない女の子にどうしたら良いか分からず、悩み出したヒナタ。ふと、アカリの事を思い出して、気分をちょっと変えようと女の子にまた問いかけた


「あのね、私、アカリっていう子を探しているんだ。どこ行ったかしらない?」

 ヒナタが女の子に質問すると、ゆっくりと顔を上げ、じーっとヒナタの顔を見つめだした。ヒナタも女の子を見つめていると、女の子が少しずつ悲しい顔になってく。触れていた手の感覚が段々と無くなって、ヒナタが驚いて手を離した瞬間、女の子の姿が消えてしまった

「消えちゃったんだ。そっか、それは良かったのかな……」

 突然、ヒナタの後ろから聞こえてきた声。驚いて振り向くと女の子がいた方を微笑み見ている女の子がいた


「……誰?」

「貴方が優しいから嬉しかったから、どこか行っちゃった。でもすぐ会えそうだね」

 新たな女の子の登場に、少し警戒するヒナタ。クスクスと笑い、一人話しをする女の子の姿に怖くなって少しずつ後ろ歩きで離れてくヒナタ。そんなヒナタに女の子が、手を差し出した

「私、ヒナタに伝えたいことがあるの。お話、聞いてくれる?」

「……どうして、私の名前を知ってるの?」

 名前を呼ばれて、女の子から離れてく速度が早くなってく。だが、その女の子も手を伸ばしたまま、どんどんヒナタに近寄ってく。距離が縮まるどころか、あっという間に距離は近づき、ヒナタの手をつかんでグイッと引っ張って、怖がるヒナタをなだめるように、ニコッと笑い話しかけた

「少し、お散歩しながら話そう。その方がきっと、ここの事、分かると思うから」

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