第51話 光が導いた道の先

「ヒナタ、帰ろうよ。怖いよ、危ないよ」

 暗闇の中を迷うことなく進んでくヒナタに対し、ヒナタの服をぎゅっとつかんで怯えるアカリ。キョロキョロと辺りを見渡し歩いても、道筋も見当たらず、何処にもぶつからずに続く暗闇にアカリの震える手が更に小刻みに震えてく

「大丈夫だよ。それに、イチカとフタバを置いて帰るの?」

「それはダメだけど……真っ暗すぎるよ……」

 上を見上げてみても暗く光もない様子にアカリがグッと息を飲んでと、突然ヒナタが立ち止まった

「あれ!」

 驚いたようなヒナタの声と共に指差す先を、ヒナタの背中から、その指差す先を恐る恐る見たアカリ。そこには、暗闇の中うっすらと光が見えていた

「光だ……」

「……行ってみる?」

「そうだね。そこしか行く道分かんないし」

 アカリの質問にヒナタが答えると、服をつかんでいた手をヒナタの手に変えて、痛いくらいぎゅっと強くつかんだ

「手、離さないでね」

「うん。絶対離さないから大丈夫」

 アカリの震える声と手にクスッと笑って頷くヒナタ。ゆっくりと歩み進め、光の目の前に着くと顔を見合わせて同時に頷く二人。思っていたよりも眩しい光に、お互い目を瞑り、またぎゅっと強く手をつかみ合う。ふぅ。と深呼吸をして、ピョンとジャンプするように光の中に入っていった










「あらあら、二人ったら、こんな所から来るなんて……」

 聞き覚えのある困ったような声が聞こえてきて、二人同時に恐る恐る目を開けたアカリとヒナタ。すると、二人の目の前にクスッと笑うレイナの姿が目に入った

「玄関はここじゃないのよ。もう……」

 二人に話しかけるレイナに戸惑う二人。顔を見合わせ、繋いでいた手を二人ぎゅっと強くつかんだ

「お母様……なんで?」

 震える声でレイナに問いかけるアカリ。だかま、レイナは答えることなくニコニコと笑ったまま。その笑顔に、二人のつかむ手が更に強くなっていく。不穏な雰囲気が流れる中、どこからかコツコツと、こちらに近づいてくる歩く足音が聞こえてきた

「二人とも、よくここに来れたね」

 やっと現れたアカリとヒナタの姿に、クロスが嬉しそうな顔をして話しかけた

「お父様も……どうしてここに?」

「ここは、仕事場だよ。少々遠回りしたみたいだが、よく来れたね」

「お父様の仕事場?」

 アカリが問いかけに答えたクロス。だが、返事を聞いてアカリが首をかしげていると、ヒナタがグッと息を飲み、恐る恐るクロスに問いかけた

「あのお父様。私達、探し物をしてて……」

「これかい?」

 ヒナタの質問に遮るようにクロスがそう言うと、イチカとフタバがクロスの側に、ふわりふわりと浮かび現れた


「フタバ!」

 姿を見るなり叫ぶアカリ。見つかって少しホッとしたのか、少し笑顔になるアカリに対し、ヒナタは更に表情が強張っていく

「イチカも……どうして」

「元々、私の本だよ。側にいても不思議じゃないよ」

 クスッと笑って答えると、イチカとフタバが二人の元に向かってふわり浮かんでいく。フタバが側に来ると慌ててつかんで、ぎゅっと抱きしめるアカリ。ヒナタも側に来たイチカを抱きしめる。レイナがその光景を微笑ましく見ていると、クロスが振り返り、顔を横に向けながら、アカリとヒナタに話しかけた

「それより、みんなでこの仕事場をお散歩しようか。二人が聞きたいことも、少しは分かるかもしれないからね」

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