第50話 手を伸ばして叫んだ未来
「レイナ、何をしているんだい?」
アカリとヒナタ達がレイナがいる場所に、近づいていく中、本を読みはじめたレイナに声をかけたクロス。声に気づいて、レイナが顔を上げクスッと笑った
「あの子達が来る前に、少しでも読んでおこうと思ってね」
そう言うと、手に持っていた本にまた目を通し読みはじめたレイナ。本の内容を見てまたクスッと笑った
「この本が消える前に、少しでも覚えておかなきゃね」
「心配いらないよ。アカリとヒナタがいる限りはね」
「あら、そうだったわね」
クロスの言葉に本を本棚にも戻してくレイナ。すると、本を置いた瞬間、バサッと独りでに床に落ちた本。その本を悲しげに見つめているレイナ。その後ろからクロスが優しく抱きしめた
「二人が来るのはまだ少しかかりそうだ。君はその間、少し休憩するといい。二人が来たら呼ぶよ」
「ええ、ありがとう」
レイナを抱きしめていた手を離し、クスッと笑って離れていくクロスの姿が見えなくなると、レイナがまた落ちた本を見つめ、はぁ。とため息をついた
「あれ、ここ……」
その頃、歩き疲れた顔をしたアカリが、ふと側にある物に目に入って足を止めた
「どうしたの?」
隣を歩いていたヒナタがアカリに声をかけると、目に入ったその場所を指差した
「なんか……変じゃない?」
そう言うと、二人一緒にアカリが指差した場所へ歩いていくと、そこには雑草に囲まれた大きな石がポツンと置かれていた
「ただの大きな石じゃないの?」
その石の周りを見渡してくヒナタ。アカリもその様子を見て、うーんと悩みはじめた
「うん、そう見えるんだけど……」
「別に変なところなんて……」
と、アカリに返事をしながら、その石にヒナタがそっと触れると突然、グラグラと地面が揺れはじめた。慌ててアカリの側に行って、抱きしめあう二人。イチカとフタバも側で空に浮かんで動かずにしていると、揺れが収まり、ホッと胸を撫で下ろす二人。恐る恐る大きな石の周りを手を繋いで一緒に見渡してくと、ヒナタが触れた場所に、大きな穴が開いていた
「ヒナタ、すごい……」
呆然とした表情でヒナタを見るアカリ。その声と顔にヒナタが慌てふためく
「いや、私じゃないよ。勝手に……」
アカリの言葉に否定しながら、ふとその穴に目を向けると、中は真っ暗な事に気づいて恐る恐る近づいていく
「入れるんじゃない?」
「えー。無理だよ……」
アカリもヒナタの側に来て、暗い穴の中を見ていると、二人の側でふわふわと浮かんでいたフタバが、穴の中を見て、突然暗闇の中へと入っていった
「フタバ!」
慌てて手を伸ばすアカリ。だが、手は届かず声をかけても、どんどんフタバは暗闇へと消えていった。手を伸ばしたままアカリが呆然としていると、その手の横をイチカも通り暗闇へと消えていった
「ちょっと、イチカ!」
ヒナタも手を伸ばし叫んで、イチカを呼び止めるが、止まることなく暗闇へと消えていった
「もしかして、ここがお家なのかな……」
「えー、でも……」
そう話をしながら、暗闇の中を見たまま動かないアカリとヒナタ。しばらく二人で暗闇の中を見ていると、グッと息を飲んだヒナタがアカリの手をグッと掴んで強く引っ張った
「どうせ、お家見つからなかったし、イチカもフタバも行っちゃったし」
「そうだけど……怖いよ……」
「大丈夫、ほら」
一歩中に入ってアカリを引っ張るヒナタ。行きたくないアカリが抵抗しても、ヒナタの力が勝って、ヒナタの少し前まで引っ張られた。ぎゅっと目をつぶりヒナタの手をぎゅっとつかんでいると、ヒナタも暗闇の中に入ってきた。目を閉じているアカリに気づいて、ヒナタがアカリをぎゅっと抱きしめた
「アカリ、急いで行こう。イチカとフタバが私達を待ってるよ」
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