第49話 この想いを誤魔化して
「あれ?ここって……」
歩くと突然足を止めたアカリ。少し後ろを歩いていたヒナタも足を止めアカリの様子を見ていると、キョロキョロと辺りを見渡しはじめた
「ヒナタがいた場所じゃない?」
アカリに言われてヒナタも側に来てキョロキョロと辺りを見渡す。見覚えのある目の前の光景に呆然としている
「本当だ……。こんな近くにあったんだ」
「じゃあ、街も近いのかな?」
「そうなのかも……」
ふと、会話が止まり近くにいる鳥達の鳴き声や木々の揺れる音が二人の周りに響き渡る
「街に寄って帰る?」
「駄目だよ。イチカのお家探すんだから……」
アカリの提案にヒナタが少しムッとした顔で返事をすると、アカリがヒナタの側に駆け寄ってきた
「でも、一旦帰って、お母様とお父様にもお願いして探そうよ」
「言ったって、本がお空飛んでいて、お家探してってお願いしてるなんて信じてもらえないよ」
すぐヒナタに言い返されて少しうつ向くアカリ。後ろから感じるアカリの様子を一瞬見てすぐ、目をそらし見て見ぬふりをするヒナタ。すると、ゆっくりと顔を上げたアカリが、ふわり浮かぶフタバを見て、今度はしょんぼりとした顔になった
「そっか……でも、どうする?」
「歩こう。ここら辺なら道も少し分かるし、近くかも」
「まだ歩くのー?」
「歩きはじめたばかりじゃん。ほら行くよ」
アカリを置いてスタスタと歩きはじめたヒナタ。その後ろ姿にアカリがはぁ。とため息ついた
「フタバー。もうちょっと近くにさぁ……」
アカリの側で、ふわり飛んでいたフタバを取り、空に掲げながら、不満げにフタバにそう話しかけていると驚いた顔で、言葉を失い固まった
「アカリ、どうしたの?」
追いかけて来ないアカリに気づいて、戻ってきたヒナタがフタバを見つめ動かないアカリを見つけ声をかけると、恐る恐るヒナタの方に振り向くと、手に持っていたフタバを、ぎゅっと抱きしめた
「やっぱり、小さくなったよね……」
「何が?」
「フタバ、昨日より小さいよね。持った時、なんか違う気がする……」
背を背け不安そうに言うアカリの姿を何も言い返さず見つめるヒナタ。その側で心配そうにグルグルとヒナタの周りを回るイチカを手に取って抱きしめた。まだ背を向けているアカリを見て、ヒナタも背を向けてスタスタとまた家を探しにと歩きはじめた
「行こう。アカリも私も気になることがきっと分かると思うから……」
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