第48話 抱きしめて、気持ちを落ち着かせて

「ここどこ?」

「さあ?どこだろう……」

 光が消え唄うのを止めて、辺りを見渡すアカリとヒナタ。さっきまでいた場所より草木に溢れた見慣れない光景に、不安からかアカリの表情が段々と強張っていく。その不安を取り除くように、イチカとフタバが二人の元に戻ってきた

「フタバ!」

「イチカも……良かった」

 イチカとフタバを取りいつもより、ぎゅっと強く抱きしめる二人。しばらくすると、気持ちが少しずつ落ち着いてきて、アカリがふぅ。とため息ついた

「お家、ここら辺なのかな?」

 アカリがキョロキョロと辺りを見渡しながら、ヒナタに問いかけると、ヒナタも周辺を歩きながら、辺りを見渡しはじめた

「でも、お家らしき建物なんてないし……どうしよっか」

 慌ててヒナタの後を追いかけながら、声をかけるアカリ。木々をかけ分けて一緒に歩きだす

「少し周り歩いてみる?」

 そう言うと、歩いてきた場所から方向を変えて、ヒナタがアカリを置いて一人スタスタと歩き出した

「ねぇ、ヒナタ……」

 離れていくヒナタの後ろ姿を見て、小声で声をかけたアカリ。声が聞こえて、振り返るヒナタ。ちょっと機嫌が悪そうな横顔に、あわてふためくアカリ。バタバタと足音をたてて、ヒナタの方へと走り出す

「な、なんでもない。早く探そう」

 ぎこちなく笑ってヒナタを追い越し走ってくアカリ。追いかけることなく木々に隠れ見えなくなってく

「イチカ。大丈夫?」

 一人残ったヒナタがアカリに聞かれないように、ポツリ呟く。それに答えるように、ほんの一瞬小さな光を灯したイチカ。それを見たヒナタが歩いていた足を止め、イチカをまたぎゅっと強く抱きしめた

「きっと大丈夫……アカリもフタバもいるもんね」





「はやり、本は少し足りないか」

 無数にある本棚を見つめ、ため息をついたクロス。そのまま、奥にある本棚へと歩いてく

「大分、消えてしまったな……」

 昨日よりも隙間の空いた本棚から、一冊本を取り出して、またため息をついたクロス。そのまま、本を持ったままレイナの元へ戻ってく

「ノアは間に合いそうかい?」

「いえ、少し遅れそうね」

 本から映し出される、たくさんの本を持ち街中を歩くノアの姿を見つめているレイナの顔が、あまり浮かない表情なことに気づいたクロス。レイナの肩を体に寄せた

「どうした?」

「いえ、なんでも……」

 そう言い、ノアの映る本から少し離れて置かれていたアカリとヒナタが映る本に目を向けた

「二人に会えるんだもの。笑顔でなければいけないわね」

 ちょうど、光が消えて戸惑っている二人が映し出されていて、その姿を見てレイナがクスッと笑った

「そうだな。少し落ち着こうか。珈琲を持ってこよう。それとも、紅茶が良いかい?」

 レイナの笑みに、つられるようにクロスもクスッと笑い、抱きしめていたレイナの体を離した

「それじゃあ、紅茶を頂こうかしら」

 部屋を出ていくクロスの後ろから答えると、少し振り向いてクスッと笑い出ていったクロス。遠ざかっていく足音が聞こえなくなると、アカリとヒナタの映る本を見つめ、ぎゅっと両手をつかんだ

「二人とも……。どうか無事で辿り着いて……」

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