第52話 想いを切り裂く駆け足

「少し足元が暗いから、気をつけて進むんだよ」

「……はい」

 歩いている途中、灯りが壁にあっても薄暗い廊下の中を歩くアカリとヒナタ達。コツコツと歩き続ける音が響いて、アカリがフタバを抱きしめていた手が強くなっていく

「二人とも、今度からはちゃんと玄関から入るのよ。ビックリしちゃうから」

「ご、ごめんなさい……」

 アカリの後ろではレイナとヒナタが話をしている。話の内容が気になるのか、アカリが少し後ろの方に振り向き、聞き耳をたてながら歩いてく


「フタバ……」

「その本とは仲良くなったかい?」

 隣から大事そうに抱きしめて呟くアカリの声が聞こえたのか、クスッと微笑み問いかけるクロス。その声に、フタバを見るために少しうつ向いていた顔を慌てて上げた

「はい……仲良くなれました」

 か細く返事をして、ぎゅっと本を抱きしめるアカリを見ると、今度は後ろにいたヒナタの方に振り向いた 

「ヒナタはどうだい?」

「えっと……」

 急にクロスから声をかけられて答えられず、ヒナタが少しうろたえると、抱きしめていたイチカに目が入ったクロス。その姿にクスッと笑った

「あまり無理はさせちゃダメだよ」

「はい……ごめんなさい」

 ヒナタの声に、不安が募ってくアカリ。その後は会話もなくただクロスの案内で歩み続けていく





「さぁ、着いたよ」

 大分歩いて、クロスに連れてこられたのは、大きな扉の前。その大きな扉を引いてアカリとヒナタを招き入れたクロス。恐る恐る手を繋いで入ってく二人。歩いてきた廊下よりも薄暗いその部屋の中をキョロキョロと辺りを見渡していく

「すごい……本がたくさん」

「お家の書庫よりたくさんある……」

 数えきれないほどの本の数々に驚くアカリとヒナタ。その様子を微笑ましく見ていたクロスの隣にレイナが不安げな顔をしてやって来た。その表情に、レイナをぎゅっと肩を寄せたクロス。その間も本棚を呆然と見ているアカリとヒナタ。ふとイチカとフタバを抱きしめていた手が緩まって、突然二人から離れ、ふわりと飛んでいった

「フタバ待って!」

「イチカもちょっと待って!」

 慌ててイチカとフタバの後を手を伸ばし追いかけてく二人。薄暗く床に本が散らばる中、ドタバタと部屋の奥へと走っていった


「二人とも、走ったら危ないわよ」

 レイナの声が聞こえないのかどんどん離れていく二人。その後ろ姿に、レイナが両手をぎゅっとつかんだ

「レイナ、大丈夫かい?」

「えぇ、大丈夫よ。それより……」

 二人が話をしている間に、イチカとフタバを追いかけていたアカリとヒナタの姿が見えなくなっていた。ドタバタと少し離れた場所から聞こえてくる足音に、レイナの肩を抱いていたクロスが少し力をいれて、レイナの体を寄せた

「二人の後を急いで追おうか。あまり本棚の奥まで行っては良くないからね」

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