第46話 明るく素敵な帰り道を目指して

「あら、ノアさん。帰ってきたんですか?」

 アカリとヒナタの様子を見ている家政婦達とは別に、家の掃除をしていた家政婦がノアの姿を見かけて、ちょっと驚いた顔で話しかけた。声に気づいて歩いていた足を止め声のする方に振り返るノア。家政婦達が近付いてきて、困ったように笑った

「ああ、本が大分少なくなってきたから、ここの本を持ってくるように言われてね」

「そうですか……。本が……」

 ノアの話を聞いて家政婦達が顔を見合わせ、不穏な雰囲気が流れ出す。その気配を感じたノアが話題を少し変えようと、ぎこちない笑顔で家政婦達に話かけた

「そうだ。アカリ様とヒナタ様は今、何をしてるか分かる?」

「さっきまで朝御飯を食べていましたよ。食べすぎで今は休憩をされています」

「そうか。食欲があるなら良かった」

 アカリとヒナタの状況を聞いてクスッと笑うノア。だが、家政婦達は不安な顔を拭えないまま顔を見合わせている

「では、もう行くよ。クロス様一人であの場所を守っているからね」

「わかりました。お気をつけて」

 お辞儀をして見送る家政婦達に、手を振り家を出掛けていったノア。姿が見えなくなると掃除の続きをはじめだした家政婦達に、ほんの少しだけのんびりとした時間が過ぎていく










「まだまだ歩きそうだね」

 食後の休憩を終えて、また歩きはじめたアカリとヒナタ。だが、周りの風景はずっと変わらず、少し飽きてきたのか、アカリの歩く速度が昨日よりも遅くなっていく

「ずーっと道も風景も変わんないけどさぁ、本当に大丈夫?」

「うん、大丈夫」

 スタスタと歩き続けるヒナタの後ろ姿を見て、はぁ。とため息ついたアカリ。ぎゅっと抱きしめていたフタバを掲げてじーっと見つめだした

「ねえフタバ。どうにかして、すぐにお家行けないの?」

 アカリの言葉が聞こえたヒナタ。足を止め、ほんの少し振り返った

「行けると思うけど……いいの?」

 ポツリ呟いたヒナタの言葉が聞こえて慌てて駆け寄ってくアカリ

「行けるの!じゃあ行こうよ!」

 ニコニコと笑って言うアカリとは違い、ヒナタは顔を横に向けたまま

「お母様も心配してるだろうし、早くイチカとフタバの家に行って、私達も帰ろうよ」

 ヒナタの前に来て楽しそうに話すアカリ。うつ向いて顔を覗き込むと、イチカをぎゅっと抱きしめ動かないヒナタの姿に、不思議そうに首をかしげた

「……ヒナタ?」

 すぐ側で聞こえた心配そうなアカリの声に、ハッとした表情で、慌ててうつ向いていた顔を上げた。フタバを抱きしめ不安そうな顔をしているアカリを見つけて、慌ててニコッと笑って抱きしめていたイチカを、ぎゅっと強く抱きしめた

「そうだね。のんびり歩くよりも、イチカのお家に早く行って、帰りに甘いお菓子食べに行こっか」

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