第45話 想いを伝える唄声を
「アカリとヒナタは眠ったみたいだが、君は眠らないのかい?」
夜中、一人外に出て夜空を見ていたレイナを見つけて声をかけたクロス。声が聞こえて少し振り向くレイナ。後ろから足音が聞こえて、すぐまた夜空を見上げた
「もう少ししたら……」
か細い声で返事するレイナ。隣に来たクロスがその言葉にクスッと笑って、レイナの肩をぎゅっと寄せた
「今更、止めるということは、君もこの本達を見て君も分かっただろう。ノアも少々不本意そうだが、それでも手伝ってくれている。だから大丈夫だ」
「そうね……じゃあ」
肩に置かれたクロスの手を解くように、一歩前に出た。そのまま、歩き続けるレイナの姿をクロスが見つめていると、服をふわりと浮かせるように、クルリと振り返ったレイナ。クロスを見つけてクスッと笑った
「今日、二人が来ないのなら、少し唄おうかしら……」
「うーん……」
朝、太陽の日差しの眩しさで目が覚めたアカリ。うーんと一度背伸びをして、ゆっくりと体を起こした
「ヒナター。起きてー」
隣でまだ熟睡しているヒナタの体を揺らす。そのせいでハンモックが大きく揺れるが、ヒナタは起きる様子もなく熟睡している
「もう……、またお寝坊さんなの?」
ムッとしながらも、ハンモックからそーっと降りたアカリ。地面に足がついて、もう一度背伸びをして、ふぅ。と大きく深呼吸をした
「フタバおはよう。イチカも……」
ハンモックに置いていたフタバを取って、側にあったイチカにも声をかけたアカリ。並ぶように置かれたイチカとフタバを見ていると、ヒナタが寝返りをうった。隣で寝ているはずのアカリの気配がないことに気づいたヒナタが、そっと目を開けた
「……アカリ、起きたの?」
「う、うん。おはよう……」
アカリの姿を見て、ゆっくりと体を起こし、うーんと背伸びをするヒナタ。恐る恐るハンモックから降りて、もう一度背中をして、ふぅ。と深呼吸をした
「アカリ、もう行く?ご飯食べる?」
「えーっと、どうしようかな……」
イチカとフタバの方をチラチラとみながら、困ったように返事をするアカリ。その態度にヒナタが、はぁ。とため息ついてハンモックにいるイチカを取った
「ご飯食べよっか。まだまだ歩きそうだし」
「うん、ヒナタとイチカが大丈夫なら……」
アカリもフタバを取りながらヒナタに返事をして、ぎゅっとフタバを抱きしめ目線を反らすアカリ。ずっと元気のない返事をするアカリの態度に、ヒナタがはぁ。とまた、ため息ついて、アカリが大事そうに抱えるフタバを指差した
「アカリ。フタバ少し貸りてもいい?」
「うん……。どうぞ」
アカリからフタバを受け取ると、イチカはヒナタの側でふわふわと浮かび、ヒナタがフタバのページをめくる様子を見ている
「何も書かれてないよ」
「ううん……書いてるよ」
と、ページに指を指すヒナタ。だが、アカリには何も書かれていない真っ白なページにしか見えず、首をかしげた
「それじゃあアカリ、一緒に唄って」
「えっ?何を唄うの?」
ヒナタからの突然のお願いに戸惑っていると、もうフタバを返され更に戸惑っていると、側でふわり浮かんでいたイチカを取り、ぎゅっと抱きしめ唄いはじめたヒナタ。その姿に
アカリが呆然と見ていると、ヒナタがアカリに手を伸ばした。ヒナタが唄うアカリの好きなその唄とニコッと笑っているその姿に、手を取り一緒に唄いはじめたアカリ。二人の唄声にイチカとフタバが二人の周りをふわふわ浮かび、段々と光に包まれてく。アカリとヒナタの唄が終わると、光も消えて、二人の足元にたくさんのご飯が現れた。その光景にアカリが驚いていると、側で嬉しそうにイチカとフタバが浮かんでいる。ヒナタは出てきたパンを一つ、つまみ食いをして、アカリにニコッと笑った
「それじゃ、ご飯食べよっか。残しちゃ駄目だよ」
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