第44話 いつもと同じお月様

「レイナ様、大丈夫ですか?」

「……ええ、大丈夫よ」

 不安そうな顔をしたノアに、クスッと笑って答えるレイナ。だが、すぐにうつ向いて二人に重い空気が流れる

「二人はどんな感じ?」

 ゆっくりと顔を上げてノアに問いかけるレイナ。その言葉を聞いて、不安そうだった顔が段々と困った顔になっていく

「それが……。迷子になったみたいで、お二人とも険悪になってしまい……」

 ノアの言葉を聞いて驚き震えだすレイナ。それに気づきながらもノアの報告は続く

「今日、ここに来るのは厳しいかと……」

「……そう」

 ノアにそうか細い声で返事をすると、レイナがまた、うつ向いてしまった


「迎えに行かれますか?」

 ノアの問いかけに返事をすることなく、黙ってしまったレイナ。その姿にノアは、また問いかけることなく側でレイナの返事を待つ

「クロスは今、何をしているの?」

「本を読まれていますよ。大分読める本も少なくなってきています……だから……」

「二人の唄とその力が宿る本が必要なことはわかるわ。でも……」

「レイナ、ノア」

 二人の話の途中、声をかけてきたクロス。あまり浮かない表情のレイナとノアを見てクロスがクスッと笑った

「アカリとヒナタも、夕飯を食べはじめた。我々も夕食にしようか」






「暗いね……」

 夕御飯後、大分夜も更け歩けなくなったアカリとヒナタ。イチカに出してもらったハンモックを木に掛け、ヒナタと一緒に横になりっていたアカリが、空を見上げポツリと呟いた

「いつもお家で見る大好きなお月様と、おんなじなのに今日は嫌いだな……」

 アカリの言葉に、月明かりの光でイチカを読んでいたヒナタが、ふとアカリの方に振り向いた

「どうして?」

「お母様もお父様もいないもん……」

「私がいるよ。イチカもフタバも今はいるじゃん」

「そうだけど……でも……」

 お腹の上に置いていたフタバを取り、じーっと見つめるアカリ。すると、ヒナタがイチカをパタンと閉じて、ハンモックと一緒にイチカに出してもらった大きな毛布をアカリの顔を被せるようにバサッと動かした。そのせいでハンモックが大きく揺れる。すぐに揺れが収まり、アカリが毛布から顔を出すと、ヒナタがもう一つ毛布を被り眠ろうとアカリから体を背けていた。眠ろうとする姿をじーっと見つめるアカリの視線を感じて、ヒナタがはぁ。とため息つきながら、話しかけた

「もう眠ろう。ちゃんと休んで早くイチカとフタバのお家に行かなきゃね……」

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