第41話 二人の笑顔に心配なんていらない
「お腹空いたー」
すぐまた足取り遅くトボトボと歩きはじめたアカリ。その声に今度はすぐ足を止めアカリの方に振り向いたヒナタ。ペタンと地面に座り込んでしまったアカリの太ももにフタバがふわりと舞い降りた
「ねぇ、ヒナタ。ちょっと休憩しようよ、フタバもイチカも休もうって言ってるよー」
アカリの言葉に答えるように、ヒナタの側で浮かんでいたイチカも、フタバが座るアカリの太ももの反対側にふわりと舞い降りた
「もー。早く行きたいのに……」
動く気配のない様子に、歩くことを諦めて、アカリの隣にヒナタも座って、ふぅ。とため息つきながら足を伸ばした
「でも、ご飯どうしよう……」
アカリがしょんぼりと呟いていると、ヒナタがアカリの太ももにいたイチカを取ると、フタバを見ながら指差した
「じゃあ、フタバにお願いしてみたら?」
「フタバに?」
ヒナタの言葉を聞いて、不思議そうな顔でフタバを手に取るアカリ。じーっとフタバを見つめて、ふぅ。と大きく深呼吸をした
「私、あまーいお菓子食べたいな。フタバ。お願い!」
フタバを両手に持ち、目をつぶりお願いするアカリ。お願いに力が入りぎゅーっと本を強くつかんでいるせいでプルプルと腕が震えてる
「……ダメ?」
そう言いながら恐る恐る目を開けてみる。お菓子もなく何の変化もないフタバの姿に、はぁ。とため息ついた
「ダメだったー。ねぇ、ヒナタ……」
しょんぼりと、ヒナタの方に振り向くと驚いて表情が固まるアカリ。なぜかヒナタの両手にはアカリが食べたかったお菓子やケーキを持って美味しそうに食べていた
「ヒナタなんで……」
「なんでってなに?」
口一杯にお菓子を頬張っているヒナタ。その美味しそうなお菓子とヒナタの姿に、お菓子を持つヒナタの手に向かってアカリが手を伸ばした
「私にも頂戴!」
「ダメだよ!これは私の!」
覆い被さるように、ヒナタが持つお菓子を奪い取ろうとするアカリと取られないようにジタバタと動くヒナタ。そんな
二人の側でイチカとフタバが戸惑い、うろたえている
「……楽しそうですね」
本で二人の居場所を見つけていたクロス達。ちょうど二人が座ったところから様子を見て、楽しそうにはしゃぐ二人の姿に、緊張感が少し解れてノアが苦笑いで呟いた
「そうだな。どうやら、こちらの心配は無用みたいだな」
その隣で一緒に見ていたクロスもクスクスと笑う。そんな中、元気な姿を見ても不安な気持ちが拭えないレイナが本から目を背けていた
「レイナどうした?」
クロスに声をかけられて、クロスの方を見ながらゆっくりと顔を上げると、か細い声で返事をした
「二人のお迎えに行かないのですか?」
「方向的にはこちらに合っている。直に来るだろうから、ここで様子を見よう」
そう言われてクロスから目を背けたレイナ。それを見たクロスが、少し困った様子で椅子に座り、ふぅ。と大きめのため息をついた
「少しお休みになられた方が……」
「そうだな。少し休もうか。ノア。悪いが二人の様子を見ててくれ」
返事をしながら、ゆっくりと椅子から立ち上がると、まだ顔をうつ向かせていたレイナの手をそっと取った
「レイナ、一緒に来てくれるかい?」
「ええ……もちろんです」
微笑むクロスを見て、レイナも少しきごちなく微笑み答えると、手を繋ぎ少し離れた場所にあるソファーへと歩いていく。二人の後ろ姿を見届けたノア。アカリとヒナタが映る本を見てポツリ呟いた
「二人のためにか……本当にそうなのか……」
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