第40話 見えない未来に苛立ちを

「ねぇ、ヒナタ……。まだ、歩くの?」

「うん。もう少し頑張って」

 その後も休むことなく歩き続けヘトヘトなアカリに対し疲れた顔も見せず、歩き続けるヒナタ。疲れて苛立ってきたアカリ。ヒナタの後ろから大声で叫んだ

「お家も街も見えないし、ヒナタどこに向かってるの?」

 その苛立つアカリの声に、返事も振り返ることもせずぐんぐん進むヒナタ。その態度にムッとしたアカリご足を止め更に大声で叫んだ

「ねぇ、ヒナタ!聞いてるの?」

「うるさいなぁ。フタバに聞いたらわかるじゃん!」

「フタバは話せないから分かんないよ!」

 喧嘩腰に叫ぶ二人。その声に、イチカとフタバが困ったように、アカリとヒナタの周りをグルグルと回っている。言い争いをしながらも、二人横に並んで、まだまだ歩き続けていく








「こんなにまだ、たくさんの本が……」

 薄暗く床に散らばった本が溢れ、足元が悪い部屋の辺りを見渡すレイナ。足元にあった埃かぶった本を一冊取って、その本の表紙をじっと見つめた

「書庫の本とは大分違うのね」

「そうだな。家は、アカリとヒナタに影響がない本をなるべく置いているからな」

 レイナの側に来て一緒に手に持つ本を見つめるクロス。ふと、二人の様子を見ていたノアに気づいて、クスッと笑って近づいていく

「ノア、大丈夫か?」

「……ええ」

 元気のない様子でノアが返事をすると、会話が止まり静かになり、うつ向いてしまったノアをみて、ふぅ。とため息ついてクロスが側にあった椅子に腰かけると、誰も話すことなく時間だけが過ぎ、少しずつ重々しい雰囲気が増していく

「本当に直にお二人が来るのですか?」

「たぶんな。本に導かれいずれ来るだろう」

「私のうたで止められないの?」

 突然、二人の話しに割って入ったレイナ。埃かぶった本を抱きしめたまま二人の側に近づいていく

「二人にはまだ力がないわ。だから、私が……」

「君のその素敵な力でも到底無理だから、二人がするんだ。君だって分かるだろう」

「……そうね、そうだったわね」

 うつ向きながら、返事をするレイナ。その姿を見て椅子に座っていたクロスが立ち上がり、レイナの側に来てそっと頬に触れ抱きしめた。それでも、うつ向いたままのレイナ。すると、ふぅ。と一つため息ついてレイナから離れると、ノアの側に来ると、二人の傍にあった机の上に置かれていた本を一冊手に取り、不安げにこちらを見ているレイナとノアに向かって不敵にニコッと笑った

「本でアカリとヒナタを探してみようか。もしかしたらもう、この近くまで来ているかもしれないからね」

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