第39話 もしも、二人が迷子になれば
「ねぇ、ヒナタ。ここ、どこか分かるの?」
アカリの前をスタスタと歩き続けるヒナタ。慣れない道に、疲れが溜まってくアカリの足取りが段々と遅くなってく
「わかんない。来たことないもん」
「じゃあ、もう少しゆっくり歩いてよー」
疲れた声で話しかけるアカリ。だが、ヒナタは止まることなくどんどん進んでく。追いつけなくなったアカリが足を止めて、ふぅ。と深呼吸した
「フタバは、ここがどこか分かる?」
側でふわふわ浮いてアカリの心配をしているフタバに声をかけても、返事はなく側でただ浮かんでいるフタバを見て少しムッと怒った顔になったアカリ。すると、話し声を聞いて、少し前を歩いていたヒナタが足を止めアカリの方に少し振り返った
「フタバは知ってるよ。イチカも来たことあるよね」
「そうなの?」
「うん……きっとそうだよ」
「ヒナタ、なんで分かるの?」
パタパタと小走りでヒナタの所に走っていくと、追いつかれないように、ヒナタもまた少し早歩きで歩みはじめた
「ねぇ、ヒナタ!ヒナタってば!」
「うるさいなぁ、ついてきたら分かるよ!」
「そんな言い方しなくてもいいじゃん!ねえ、フタバ」
怒った声で返事をするヒナタの態度に、同じくムッと怒った顔で言い返すアカリ。本がパラパラと揺れる音と、アカリの叫ぶ声が聞こえる中、まだ建物一つ見当たらない道を二人きりで進んでく
「本が増えている……」
「うたの力があっても、やっぱり……」
とある場所にレイナと一緒に戻ってくるなり、驚きのあまり言葉を失うクロス。その表情を見てレイナの不安が一気に募っていく。震えるレイナを支えながら、二人一緒に奥へと進んでいくと、うっすらと光が見えてその光に向かって声をかけた
「ノア、いるか?」
光から影が写り少しずつ大きくなってく影。その影の方にクロスが一人、レイナを置いて歩いていく
「はい。もう来られたんですね」
クロスの姿を見て、少しホッと胸を撫で下ろすノア。隣に来たクロスもノアの姿を見てクスッと笑う
「ああ、アカリとヒナタが、本とうたの力でどこかへ行ってしまった。直に二人もここに来るだろう」
「……わかりました。では……」
二人の会話が止まり、クロスの側に来たレイナ。薄暗さで余計に顔色が悪そうなレイナの姿を見たノア。不安そうにレイナに声をかけた
「レイナ様。来られたのですか?」
「ああ、万が一に備えて来てもらったんだ」
うつ向き返事をしないレイナの代わりにクロスがそう言うと、レイナの背中をそっと押し辺りを見渡しながら、ゆっくりと歩くレイナ。周辺にある本の数々に重々しい雰囲気を感じ思わず息を呑む
「本当に、こんな場所が……」
無作為に置かれた本達から目を背けたレイナ。見ない振りをするレイナにノアも目を背ける。すると、クスッと笑って
クロスがレイナに優しく声をかけた
「二人が来る前に、レイナも一度、本を見てみようか。二人のための本を……」
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