第38話 ぎこちない笑顔の訳

「二人の居場所が分からない?」

「はい。うたを唄いはじめてから、本に写らなくなって……」

 クロスの部屋で書庫の様子を見ていた家政婦達が報告に来た。その報告を聞いて、悩みはじめるクロス。書庫の中を探し終えた家政婦達も、レイナの側に来て一緒にクロスの様子を伺っている

「ノアはもう出掛けたか?」

「はい、大分前に……」

「では、私はノアを追う。アカリとヒナタの捜索を頼む。見つけ次第、二人の後を追って、家に帰すように」

「わ、わかりました」

 クロスとの会話を終えて書庫を出ていく家政婦達。残った家政婦達が、時間が経ち少しずつ顔色が悪くなっていくレイナを支えていると、レイナの変化に気づいたクロスが少し困った顔をして、レイナに話しかけた

「君も私と一緒に来てくれるかい?」

「……でも」

「二人とも、来るかもしれない。一緒に来れば、話しも早い」

 その提案に、納得しつつも浮かない表情のままのレイナ。不安げな家政婦達が二人の様子を見守る中、クロスがまたレイナに話をした


「まだ、あの場所を見たこと無いだろう?二人が来る前に一度、見てみないか?」

 ニコッと笑って話しをするクロスを見て、少し悩んだ後、レイナもはぁ。と一つため息をついた

「……そうね」

 そう呟くと、側で見ていた家政婦達に、少しぎこちなく微笑んだ

「家の事、よろしくね。二人が帰ってきたら、私の代わりに書庫に来たこと、きつく叱ってね」

「……はい」

 レイナのその笑顔に答えるように、家政婦達もぎこちなく微笑み返事をする


「では、行こうか」

 レイナとクロス、二人一緒に書庫を出ていった。パタンと扉が閉まる音が聞こえると、ふぅ。と家政婦達のため息があちらこちらから聞こえてきた

「私達もクロス様の部屋に行くわよ。早く、お二人を探さなきゃ」

 パンパンと手を叩き気合いを入れて、書庫から出ていく家政婦達。すると、不安な気持ちがまだ拭えていないのか、何名か動かず、お互い顔を見合わせていると、気づいた家政婦が、手前にいた一人の手をつかんで、不安を振り払おうとニコッと笑った

「大丈夫よ。お二人の子供達なんだもの。信じて見守るために、早く探しましょ」

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