第35話 ふわりふわりと、その先へ
「ヒナタ……なんで?お母様は追い出ちゃダメだよ」
ヒナタの後ろ姿を呆然としながら見つめ話しかけるアカリ。その声に答えるように、振り返りアカリを一瞬見て、スタスタと歩きはじめた。まだ少し片付け残っていた服を取りながら、またアカリをチラッと見た
「いいの。お母様に、あの本を渡したくないもん」
「でも、元々はお母様とお父様の本だよ」
「そうだけど……」
返事に困り片付けていた手が止まって、少しうつ向いて、掴んでいた洋服が、何着か床に落ちていく。二人、無言になって部屋が静かになったその時、ガタガタと窓が揺れる音が聞こえてきた。驚き窓の方に振り向くアカリとヒナタ。すると、さっきまで無かったはずの二冊の本があった
「フタバ!どこに行ってたの?」
「イチカも……良かった……」
ぎゅっと本を抱きしめる二人。本が返ってきてホッと胸を撫で下ろすヒナタ。すると、抱きしめていたヒナタの腕からふわりふわりと離れて、ヒナタの前でページがパラパラとめくられ、
「何が書いているの?」
「さぁ?わかんない」
イチカの行動に、不思議そうにしていると、アカリが抱きしめていたフタバも、腕から離れてイチカの側にふわりふわりと浮かんでく
「フタバ。どうしたの?」
アカリが問いかけると、イチカとフタバが一緒にふわりふわりと動き出し、部屋の入り口へと一緒に浮かび飛んでいく
「ちょっと待って!」
アカリの止める言葉も虚しく、廊下に出るように消えていった本達。慌てて追いかけてくヒナタ。勢いつけて扉を開け廊下を走ってく。一人部屋に残ったアカリも慌てふためきながらもアカリの後を追いかけて走り出した
「はぁ……」
その頃、ヒナタに追い出された後、クロスの部屋に戻り二人の様子を見守るたレイナが、寝室でのヒナタの様子を思い出して、深いため息をついた
「大丈夫ですか?飲み物お持ちしましょうか?」
「じゃあ、紅茶持ってきてもらえる?」
心配した家政婦が声をかけられ、ぎこちない笑顔で返事をしていると、二人の様子を一緒に見ていた家政婦が、部屋の異変に気づいて、レイナに声をかけた
「レイナ様。お二人が移動されたみたいですが……」
「あら、どこに?」
呼ばれて、二人の写る本に目を通すレイナ。するとその本には、家の廊下を走っているアカリとヒナタの姿が写し出されていた
「フタバ!どこ行くの?」
「イチカも止まって!」
大声でふわふわと飛んでくイチカとフタバを、バタバタと大きな足音をたてて、追いかけてくアカリとヒナタ。全く追い付く様子もなく、疲れて走るスピードが落ちそうになってきた時、突然二冊の本が壁の中に入ってくように消えたしまった
「消えた……」
足を止めて驚くアカリに対し、ヒナタは冷静に消えた先を
見つめている
「お父様の書庫の中に入ったんじゃない?」
近くにあった扉を指差して、そう言うと、その扉の方に歩いていくヒナタ。その後ろ姿をアカリが慌てて追いかけてく
「アカリ。入るよ」
「えー。また怒られるよ……」
アカリが嫌そうな返事をしても、その止める言葉を無視して書庫の扉を開けて入っていったヒナタ。真っ暗な部屋の中を進んでく後ろ姿を見て、慌ててアカリも書庫の中へと入ってく
「いけないわ。すぐにクロスとノアを呼んで」
「はい!」
二人の様子を見ていたレイナ達。書庫には行ったのを見て急に慌ただしく動きはじめた
「私達も書庫へ行きますか?」
家政婦からの問いかけに、険しい顔をして悩むレイナ。その間に、書庫の中をどんどん進んでいく二人を見て、ガタンと音を鳴らして椅子から立ち上がった
「そうね。一緒に行きましょう。その間、なにも起きなければいいけれど……」
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