第34話 困り事は誰のせい
「イチカ!フタバ!どこにいるの!」
寝室に戻るなり、大声で叫び本を探すヒナタ。布団やクローゼットに入っていた洋服をグシャグシャにして、部屋中を散らかしながら探すヒナタの姿に、部屋の片隅でアカリが少し引き気味で見ている
「ヒナタ、落ち着いて……」
探し続けるヒナタの後ろから困ったように話しかけるアカリ。すると、本を探していた手を止めて、アカリに振り向いたヒナタ。ふぅ。と一つため息をついて、アカリに返事をする
「アカリも探してよ。イチカどこ行ったの?」
「分かんないよ。そんなに一生懸命探してるけど、あの本そんなに気に入っていたの?」
「そうだよ。そうだけど……違うの」
「何が違うの?」
「あの本はね……」
首をかしげて問いかけるアカリに、ヒナタが何かを言おうとした時、コンコンと少し大きめな音で二人のいる部屋の扉がノックされてすぐ、レイナが扉を開けて二人を見た
「アカリ、ヒナタ」
少し怒った顔で部屋に入ってきたレイナ。その表情を見て、アカリが一瞬ビクッと怯えた
「勝手に二人して走って……心配するじゃないの」
「ごめんなさい。でも、ヒナタが……」
しょんぼりとうつ向いて謝るアカリに対し、なぜかヒナタも怒った表情でレイナを見ていた
「ヒナタ……」
「お母様。私はお出掛けしません!ヒナタと本を読んだり、唄ったりして待ってます」
叫び行くことを否定するヒナタに、戸惑うレイナ。アカリもレイナの服を掴んで戸惑っている
「でも、ヒナタ……」
「ヒナタ、一緒にお出掛けしようよ。昨日言っていたケーキ屋さん行こうよ」
「行きたいけど……でも……」
少しうつ向き小声でアカリに返事をすると、プイッと顔を背けて拗ねるヒナタ。すると、さっき放り投げたグシャグシャにした布団や洋服が目に入り、おもむろに片付けはじめた
「困ったわね……」
「レイナ様、あまり無理をさせては……」
片付けをするヒナタの姿を見ながら、どうしようかと悩むレイナに、同じく困った顔をしてレイナに声をかける家政婦。まだレイナに抱きついているアカリを見て、ふぅ。と一つため息をついた
「そうね。今日は行くのを止めておきましょうか。クロスに二人の様子を伝えてくれる?」
「わかりました」
クロスに伝えるために部屋を出ようと扉を開けると、その音に反応したヒナタが、レイナの元に駆け寄って強い力で無理矢理アカリをレイナから引き離した
「お母様。お部屋から出て。みなさんも、みんな出てください」
そう言いながらレイナの背中を押して、グイグイと廊下に押し出すヒナタ。うろたえるアカリを差し置いて、レイナだけでなく、家政婦達も無理矢理部屋から追い出して、勢いづけて部屋の扉をバタンと閉めると、廊下にいるであろうレイナ達に向かって大声で叫んだ
「今、お部屋にいていいのはアカリだけです。お母様は、また後で来てください」
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