第31話 このまま、二人の為にも

「アカリ様とヒナタ様を連れてくるのですか?」

「二人が本が使えるのなら、もう連れてきても大丈夫だろう」

 アカリとヒナタが眠りについたその時、クロスの発言にノアが驚きのあまり、クロスの側に駆け寄り焦っていた

「しかし、レイナ様ですら、あまり来ないこの場所に連れてくるのは……」

「なら、三人とも一緒に連れてこようか」

 戸惑いながらもクロスの提案に反論するノアの言葉に、淡々と答えるクロス。更に反論しようとしても、言葉が見つからず、うつ向いてしまったノアを残し、クロスが一人奥へと歩きはじめた

「……中止には出来ませんか?」

 うつ向いたままポツリ呟いたノアの言葉に、歩いていた足を止め振り向いたクロス。すると、うつ向いていた顔をゆっくりと上げると、不安げにクロスにまた問いかける

「お二人には、不思議な本としてこのまま、お使いになられては……」

「ノアは中止に出来るとでも」

「……いえ。それは」

 言葉に詰まりまた少しうつ向いてしまったノア。すると、クロスもまた、ゆっくりと奥へと歩きはじめた。クロスの歩いた先は暗く、すぐに姿が見えなくなった。後を追うか一瞬戸惑っていると、早々にクロスが一冊の本を持ってノアの元に戻ってきた






「アカリには光の本を、ヒナタには影の本を持ってもらわなければならない。それはこの本達を守るためだと、ノアだって分かっているだろう?」

「ですが、お二人には、まだ負担が重すぎるのでは……魔力もあまり……」

「だからこそ、こうやって……」

 二人が言い争い、クロスが持ってきた本を開こうとした時、突然カタンと音が聞こえてきた。クロスとノアしかいないはずの場所に聞こえてきた音に、驚き振り返る二人。すると、暗い空間に光を放ちながら、ポツンと浮かぶ一冊の本。その本を取るでもなく、ただ見つめる二人。しばらくすると、ゆっくりと地面に落ちていく本。コトンと小さな音をたてて、地面に着くと今度は独りでにパラパラとページがめくられていく。するとまた、新たに一冊の本が地面にある本の真上を、ふわりふわりと浮かんで止まっている


「少し……急ぎましょうか」

 二冊の本の動きを見てノアが息を呑み呟いた

「そうだな。明朝にでも三人を連れてこよう」

 同じく本の様子を見ていたクロスも、ため息混じりにノアに答えると、入り口の方へと歩きはじめるが、後を追うこともなくただ、本を見つめるノア。それに気づいたクロスが、ゆっくりとノアに近づいて、不安そうなノアの表情を解すように、また淡々と一人語りはじめた

「大丈夫だ。二人には私だけでなく、レイナから受け継いだ素敵なうたがある」

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