第30話 安らぎを求めて
「あら、眠っちゃったの……」
「はい。眠たかったようで、お二人ともすぐに……」
クロスの部屋で、本に写るアカリとヒナタの様子を見て、少ししょんぼりするレイナ。だが、スヤスヤ眠る二人の寝姿に、ホット胸を撫で下ろしている
「そう……。それで、本は鞄にあるの?」
「いえ、お二人の側にあると思いますが……」
二人の周りを凝視して、本があるかと見渡してみるも、電気が消され、月明かり便りの薄暗い部屋の中では見つからない
「仕方ないわね。部屋に行って探してみるわ」
「はい。お気をつけて……」
部屋を出ていくレイナの後ろ姿をお辞儀をして見送る家政婦達。パタンと静かに部屋の扉が閉まると、ふぅ。と誰かが大きなため息をついた
「どうしたの?」
「なんだか疲れたなって……」
質問に苦笑いで答えていると、アカリとヒナタの様子を見ていた家政婦が声をかけた
「貴女も休みなさい。明日もまたきっと、アカリ様とヒナタ様が、朝からバタバタと楽しく騒ぐんだから」
「じゃあ、少し休もうかな……」
ため息をついた家政婦が、うーんと背伸びをして椅子から立ち上がると、ついでに数名の家政婦達も同じように休むために、部屋を出ていった。残った家政婦達が、気合いを入れ直すため、ふぅ。とため息をついた時、アカリとヒナタが眠る寝室にレイナが入る姿が本に写し出された
「ヒナタ……アカリ……」
二人の眠るベッドに、そっと座って二人の寝顔を見るレイナ。来たことに気づいていないのか、起きる様子もなく眠り続ける二人の姿に微笑む
「可愛い寝顔ね……」
そっとアカリとヒナタの頬に触れていると、気配に気づいたのか、ヒナタがゆっくりと体を起こした
「……お母様ですか?」
眠たい目を擦りながら、レイナの方に振り向いた
「あら。起きちゃったの?」
優しいレイナの声に、目が一気に覚めたヒナタがぎゅっと抱きつき、少し顔を上げてレイナを見つめエヘヘと笑う
「アカリには内緒です」
「もう、悪い子ね」
ヒナタの言葉にクスッと微笑み、抱きついて離れないヒナタの頭を撫でるレイナ。二人の様子に気づかないアカリはスヤスヤと眠ったまま。ヒナタとレイナ二人の、のんびりとした時間が過ぎていく。しばらくすると、ヒナタが今度は少し寂しげな顔でレイナを見た
「……ねえ、お母様。明日も、ぎゅってしてくれますか?」
「もちろんよ。だから、ゆっくりおやすみ」
「うん。おやすみなさい」
もう一度、レイナをぎゅっと強く抱きしめると、布団の中に戻ってくと、眠たさが勝ってすぐに寝息が聞こえてきた。二人の寝顔を見て、クスッと微笑むレイナ。ゆっくりとベッドから降りて、部屋の扉を開けると二人の寝顔を見ながらポツリと呟いた
「二人ともおやすみ。いい夢を……」
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