第32話 眩しい日差しには元気な挨拶を
「ヒナター。起きて!」
バシバシとヒナタの背中を叩いて起こすアカリ。ユラユラと体を揺らしてみても、熟睡して起きないヒナタにはぁ。とため息ついた
「まだ眠るの……」
スースーと聞こえるヒナタの寝息に起こすことを諦めて、
ベッドから降りると、部屋の中をキョロキョロと見渡しはじめた
「フタバー!ねぇ!フタバ!」
大声で昨日つけた本の名前を叫ぶアカリ。ベッドの下やクローゼット、テーブルの周りなど部屋の中を探し回っても本は見当たらない
「フタバ、寝てるの?イチカも寝てるの?」
アカリの言葉に物音一つせず現れない本。はぁ。とため息つきながら、ヒナタの方を見ると、まだ熟睡しているヒナタの姿を見て、もう一度大きなため息をついた
「もー。みんな、お寝坊さんなんだから……」
ドスドスと大きな足音をたてて、窓辺に歩いてくアカリ。カーテンを開けると眩しい日差しが入って、目を細めながら窓を開けた
「みなさん!おはようございます!」
部屋の側で花木に水をかけていた家政婦達を見つけて、手を大きく振り、大声で叫ぶアカリ。それに気づいた家政婦達がニコッと微笑み、アカリに手を振り返した
「アカリ様。おはようございます」
花木にかけていた水を止めて、アカリのいる窓に近づいてく家政婦。窓から少し身を乗り出して手を振るアカリを慌てて受け止めると、そのままぎゅっと強く抱きしめられた
「ねぇ、お母様とお父様はお部屋にいるの?」
「ええ。ですが、お二人で話しているそうで、今は会えませんよ」
「えー。つまんないの……」
抱きついていた手を離しながら、少し不満そうな顔に返事をしていると、楽しそうな話し声が聞こえたのか、目が覚めたヒナタがゆっくりと体を起こした
「アカリー。どこ?」
近くにいるのに気づかないのか、目を擦りながらアカリを探すヒナタ。名前を呼ばれたことに気づいたアカリが嬉しそうに大きく手を振る
「ヒナタ!おはよう」
「おはようございます。ヒナタ様」
声のする方に振り向くとアカリと家政婦達を見つけて、一気に笑顔になったヒナタ。大急ぎでベッドから降りるとアカリのいる窓の方に駆け寄っていく
「おはようございます!」
家政婦達に向かって元気よく挨拶をするヒナタ。そのまま窓辺でみんなでのんびりと立ち話をしていると突然、ぐぅ。と大きなお腹の音が鳴った。慌ててお腹を押さえるヒナタ。その光景に、家政婦達がクスッと微笑んだ
「お腹空きましたか?すぐ朝御飯の用意しますね」
「デザートもたくさん用意してね!」
朝御飯を用意するために、二人から離れてく家政婦達に手を振りお願いをするアカリ。その間に先に部屋の中を戻っていたヒナタがウロウロと動き回っているのに気づいて、不思議そうに声をかけた
「ヒナタ。何してるの?」
「イチカはどこ?」
「私もフタバと一緒に探したんだけど、どこにもいなくて……」
「そっか……。寝ているのかな?」
布団をバサッと裏返してベッドにいないかと探してみても、見当たらない二人の本。また本が無くなりヒナタがしょんぼりとしていると、それに気づいていないのか、アカリが部屋の扉を開けながら、ヒナタに声をかけた
「それより、早く食堂行こう。ヒナタの分のデザート食べちゃうよ」
「アカリ、ちょっと待って!」
慌ててアカリの後を追ってくヒナタ。後ろから追いかけてくるヒナタを見て、楽しそうに走り去ってくアカリ。昨日とは違い、朝から家中に明るく騒がしい声が響き渡っている
「そう……。それなら仕方ないわね」
「ああ、後で二人と一緒に行こうか」
バタバタと食堂へと走っているその頃、クロスとレイナの寝室では、朝も早くから重々しい雰囲気が漂っていた
「ノア、どうした?」
「いえ、何も……」
話し合いに参加していたノアに声をかけるクロス。あまり浮かない表情で返事をすると、三人の会話が途切れてしまった。すると、コンコンと扉が叩く音が聞こえて、ゆっくりと部屋の扉をノアが開けると、開いた瞬間、部屋の重い雰囲気を感じ取った家政婦達が、少し戸惑うように話をはじめた
「アカリ様とヒナタ様が起きられました。今から朝食を頂きますが……」
少しあたふたと話をする家政婦。話を聞いて不安げにレイナとノアがクロスを見た。その場にいる全員の視線を感じ、フッと笑うクロス。レイナの背中にそっと触れると、まだ不安げに顔を見上げるレイナに微笑んだ
「そうか、じゃあ一緒にご飯を食べようか。二人の笑顔を見ないとな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます