第28話 それぞれの名前を呼んで
「ねぇアカリ、起きてる?」
レイナ達が寝室から出て数分後、アカリにヒソヒソと小さな声で話しかけるヒナタ。声に気づいて、アカリもうっすらと目を開けた
「起きてるよ。どうしたの?」
アカリもヒソヒソと小声で返事をすると、突然ヒナタがガバッと飛び起きた
「本、読まない?」
ヒナタの言葉に驚いた表情で、アカリも飛び起き慌てはじめた
「あっ!そうだ!忘れてた!」
「しーっ!みなさんに気づかれないように……」
大きな声で話すアカリの口を押さえ、ヒソヒソと話をするヒナタ。そのまま、口を押さえられながらアカリが何度も頷くと、パッと手を離したヒナタがベッドから降りて、部屋の中をキョロキョロと見渡しはじめた
「カバン、どこ置いたっけ?」
「確かあっちに……」
電気が消された寝室を月明かりを便りに、カバンを探すヒナタ。アカリもベッドから降りて、一緒になってカバンを探す
「本さん!出てきていいよ!」
「こっちも出てきて!」
見つからない鞄にしびれを切らして叫んだ二人の声に反応するように、突然、部屋に二つの光が現れ二人の側にふわりふわりと浮かんでいく。アカリとヒナタの手元に一つずつ光が届くと、光か消えると共に本が二冊現れた
「でも、いいなぁ。ヒナタは本が二つもあって……」
本を見つめ、しょんぼりと呟いたアカリの言葉に、ヒナタもなぜか、しょんぼりとした表情になっていく
「そっか。アカリは本をまだ貰ってなかったんだっけ」
「そうだよ!お母様もお父様もきっと忘れてるんだよ!」
本を見つめ、少し怒ったように話すアカリ。その姿に、ヒナタも持っている本を見つめ、少し悩みはじめた
「じゃあ、その本、アカリにあげるよ」
「いいの?」
「うん、私、この本があるし」
ヒナタの言葉で怒った顔から笑顔に変わってくアカリ。本をぎゅっと抱きしめると、ヒナタの側に駆け寄ると、グイッヒナタに顔を近づけた
「じゃあ、この本に名前つけようよ」
「名前?」
「うん。この本は、ヒナタから貰ったから……。えっと、どうしようかな」
本と一緒に手を伸ばして、本を見つめながら悩みはじめたアカリ。その様子を本を抱きしめ見ていたヒナタがふと、テーブルの置かれた一輪の花が置かれた花瓶を見て、何か思い付いたように、アカリみたいに手を伸ばして本を見つめエヘヘと笑った
「私は、イチカにしようかな」
「じゃあ、私は……フタバ!」
二人が考えた名前が気に入ったのか、二人の周りを飛び跳ねる二冊の本。その様子に嬉しくなったアカリとヒナタも一緒になって、ベッドの上を飛び跳ねはじめた
「本は、お二人の鞄にあったのね」
「でも、鞄は確かに探したはずじゃ」
一部始終をクロスの部屋で見ていた家政婦達が言葉を失っていた
「とりあえず、報告を……」
慌てて寝室にいるクロスとレイナを呼びに走っていた家政婦。慌てているのかバタバタと足音が響いている
「やっぱり、お二人は使い方を知っているんじゃ……」
誰かが呟いた言葉に、ざわつきはじめる部屋。すると、その騒がしさを止めるように、誰がコホンと咳払いをした
「アカリ様とヒナタ様のうたと本の力を信じましょ。私達に出来るのは、見守ることと信じることよ」
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