第26話 響き渡るは幸せ音色

「たくさん怒られたね」

「そうだね。疲れちゃった」

 楽しそうに話をするアカリとヒナタ。レイナにたくさん怒られた後、土や汚れがたくさん着いていた為、一緒にお風呂に入っていた。大分、怒られた後にも関わらず、ご機嫌な二人に、監視を任されている家政婦がため息をついた

「お二人とも、あまりレイナ様とクロス様を困らせてはいけませんよ」

「うん。みなさんも心配させて、ごめんなさい」

 反省していないのか、ニコニコと笑って返事をするアカリ。その笑顔に怒る気持ちも消えて、困ったように、ふぅ。とまた、ため息をついた家政婦達。すると、一足先に体を洗い終えたヒナタが湯船の中に入ると、髪を洗っていたアカリが、大急いで洗い流すと、ヒナタが入っている湯船に入って、楽しそうに水を掛け合う

「ねえ、ヒナタ。お出掛けの間のお話、もっと聞かせて」

「うん、あのね……」

 二人の話し声がお風呂場に響き続けていると、お風呂場の扉が突然開いて、レイナが二人の様子を見にやって来た


「二人とも、お腹すいた?ご飯食べる?」

「食べるー!」

 レイナの問いかけに、手を上げ大声で返事をすると、今度はヒソヒソと二人で何やら話し始めた

「それで、どんなパンを食べたの?」

「えーっとね……あのね……」

 少し声の大きい二人の内緒話が、お風呂場に響いている。楽しそうな二人の姿に、クスッと微笑むレイナ。お風呂場の隣の脱衣場に出ると、監査をしていた家政婦達を脱衣場に呼んだ

「二人の本は見つけた?」

「いえ、それが何処にもなくて……」

「そう。二人とも、どこに隠しているのかしら……」

 アカリとヒナタとは違い、お風呂場まで聞こえない程の声で話し合うレイナ達。ふと、本を探そうと着替えに手を伸ばした時、アカリの声が聞こえてきた

「お母様!ちょっと来て!」

 大きな声で呼ばれて、本を探そうとしていた手が止まり、お風呂場の方に振り向と、曇りガラスから手を振りレイナを呼ぶアカリとヒナタの姿がうっすら見えた

「あら……。悪いけれど、本の捜索を引き続きお願いね」

 そう言い残して、二人のいるお風呂場にレイナが戻っていくと、少し緊張感が残った脱衣場とは違い、お風呂場にまた明るく楽しそうな声がまた響きはじめた






「少し、術の威力が強すぎるか」

 街外れのある場所に戻ってきたクロスとノア。少し疲れた顔をして、本を手に持ち、ため息をついているクロスに、不安そうな表情をしたノアが声をかけた

「クロス様。お二人がこれ以上、本の力を使っては……」

「まだ使い方を知らないのだろう。まだ大丈夫なはずだ」

「ですが、アカリ様がヒナタ様のもとに行かれたとなれば、きっかけが分かってしまうのでは……」

 ノアの言葉に、開いていた本をパンっと勢いつけて閉じたクロス。そのまま本を見つめ動かなくなったクロスを心配そうにノアが見ていると、入り口の方へと歩きはじめたクロス。ノアが後を追わずに、その後ろ姿を見ていると突然、歩いていた足を止め振り向いたクロス。険しい表情で少し離れた場所にいるノアを見た

「二人が気づくその前に、術を完成させよう。あの子達の為にも……」

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