第23話 唄に呼ばれて現れた光
「誰も追いかけてないよね……」
家中を走り回り書庫まで辿り着いたアカリ。廊下をキョロキョロと見渡しながら、書庫の扉をそーっと音を立てないように開けた
「ヒナタの本、ここで読んじゃおう」
薄暗い書庫の中を足音を立てないように、ゆっくりと歩くアカリ。ヒナタの本があった本棚の前に来ると、鞄からヒナタの本を取り出すと、急にムッと怒った顔で本を睨んだ
「お母様は、ヒナタにだけ本を渡してさ。私だって、ヒナタみたいに唄えるのに……」
まだ本を貰ってないことを思い出し、ちょっとだけ苛立ってきたアカリ。本をぎゅっと抱きしめると、ふぅ。と一つ深呼吸をして息を整えると、一人唄いはじめた。書庫の中に響き渡るアカリの歌声。楽しくなってきたのか、アカリの声が段々と大きくなっていく。その声に合わせるように、アカリの持つ本から、なぜか眩い光が現れはじめた
「本、やっぱりないね」
同じ頃、森の中を一人歩き続けていたヒナタ。歩いて疲れたのか、近くにあった木にもたれながらペタンと座り込んだ
「お家からも大分離れちゃったし、やっぱり、本があるわけないか……。帰らなきゃなぁ……怒られるかなぁ」
ぐぅ。とお腹が鳴って、はぁ。とため息ついた。残っていたパンを食べようと、鞄を膝の上に置いた時、一瞬誰かの声が聞こえた気がして、キョロキョロと辺りを見渡した
「……アカリの声?」
鞄を地面に置いて、立ち上がって周辺を歩いて見渡してくヒナタ。その間、本は鞄の側で動かないまま。しばらく誰か来るかと待ってみても、足音や声も聞こえず、はぁ。とまたため息をついた
「気のせいか。いるわけないもんね」
鞄の隣に座り直すと少し気分が落ち込んだのか、ため息混じりに、パンをかじる
「でも……あの声……」
聞こえた声が気になって、また辺りを見渡していると、ずっと動かずにいた本がヒナタは側でふわふわと浮いてヒナタの様子を伺いはじめた
「私は唄わないよ。そんな気分じゃないもん……」
本にそう言って、パンを食べはじめたヒナタ。その間、本は動かず、側でヒナタの様子をずっと見ている
「もう……」
本に見られている気配に根負けして、パンを鞄の上に置くと、ふぅ。と深呼吸をして、うたを唄いはじめたヒナタ。その唄声に、本も嬉しそうに、パラパラとページの音を鳴らして、ヒナタの周りを動き回る。アカリと同じく唄うのが楽しくなってきたのか、段々とヒナタの唄声が大きくなっていく。そんなヒナタの前に突然、強い光が現れた
「……えっ?なに?」
唄うのを止めてその光を呆然と見ていると、バタンと何かが倒れる音が聞こえた。それと同時に弱くなっていく光。目の前の光景に不安になってくヒナタ。そして、光が完全に無くなると、光があった場所になぜかアカリが倒れていた
「えっ?アカリ?」
ヒナタの声を聞いて、ゆっくりと体を起こすアカリ。キョロキョロと辺りを見渡すと、目の前にいたヒナタを見つけりなりガバッと抱きついた
「ヒナタ!探したよ!やっと会えた!」
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