第24話 嬉しさと戸惑いが重なる時
「アカリ、どこから来たの?」
テンションの高いアカリとは違い戸惑うヒナタ。アカリに声をかけても、嬉しさから何も答えず抱きついて離れないアカリにちょっと困ってきた頃、やっと落ちついてきたアカリがヒナタから離れた
「私、お家にいたんだけど……ここ、どこ?」
家ではないことに気づいたアカリ。急にあたふたと周辺を見渡しはじめた
「お家から離れた所だけど……。本当にお家にいたの?」
「うん。お父様の書庫で唄ってたはずなんだけど……」
「そうなの?私も本に言われて唄ってたんだよ」
「えっ、本に?」
アカリが不思議そうに聞き返すと、ヒナタの後ろからふわりふわりと本が浮かび、アカリの様子を伺っているような本を見て、アカリのテンションがまた上がってく
「スゴい!本が空飛んでる!」
浮かんでいる本を取ろうと手を伸ばすアカリ。逃げ回る本とアカリの様子をボーッと見ていると、ヒナタの背中に隠れようとした瞬間、手を伸ばしたアカリが躓いて、本を下敷きにヒナタと一緒に地面に倒れた
「これ、お母様に伝えないと!」
「でも私、本を探さないといけないから帰れないよ」
ヒナタがそう言うと、アカリが突然現れた場所付近に走ってく。ヒナタが不思議そうに後を追うと、ヒナタに抱きついた時に草むらに投げた本を見つけたアカリがヒナタに本を見せた
「本って、この本?」
「そう、それ!良かった。見つかった!」
アカリから本を取ってぎゅっと抱きしめるヒナタ。その側で動けなくなっていた本も嬉しそうに、ふわりふわりと浮かんでいる。すると、アカリがヒナタの手をぎゅっとつかんで、ニコッと笑った。その笑顔を見て急に表情が曇ってくヒナタ。顔を背けるように少しうつ向くと、ヒナタの気持ちに気づいたのか、アカリが優しくぎゅっと抱きしめた
「お家帰ろう。お母様もお父様もみんな、心配してるよ」
「……うん。アカリ、一緒に謝ってくれる?」
「もちろんだよ。ヒナタと私はいつも一緒だもん。謝るときも一緒だよ」
グイッと手を引っ張って歩きはじめたアカリ。少し転けそうになりながらも歩くヒナタ。静かだった森に二人の楽しそうな声が、森の中に響き渡っている
「アカリ様が……どうして?」
「もしかして、本を使ったの?」
「まさか……。お二人は、あの本の使い方を知らないはず」
その頃、クロスの部屋でヒナタの様子を監視していた家政婦達が、突然ヒナタの側に現れたアカリを見て騒然としていた。二人の楽しそうな雰囲気とは違い、一気に緊張感が走る部屋。
「私、レイナ様にお伝えに行きます!」
「待って!私も一緒に行く」
バタバタと部屋から数名の家政婦が部屋を出ていった
「私達は、クロス様とノアさんに連絡しましょう。手伝って」
「わかりました」
その後を追うように、また何名か部屋を出ていくと、少し静かになったクロスの部屋。残った家政婦達の緊張感を拭うように、本から映し出されるアカリとヒナタの笑顔と明るい声が部屋に響いている
「本当に大丈夫なのかしら……」
二人の様子を見ていた一人が、ポツリ呟いた言葉にその場にいた家政婦達が息を呑む。無言でアカリとヒナタの様子を見守っていると、誰かが、ふぅ。とため息をついて、手を胸の前に当てて、ぎゅっと両手を掴んだ
「大丈夫よ。アカリ様とヒナタ様の唄と想いを信じれば、きっと……」
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