第21話 突然の悩める願い

「ヒナタ様、気持ち良さそうに寝てるわね」

「そうね。木陰の風は良いものね」

 本から地面に映し出されているヒナタの寝姿を見て、クスッと微笑む家政婦達。周りには小鳥が来たりそよ風が吹いて、とても気持ち良さそうに眠り続けている

「アカリ様は、レイナ様とお出掛けになったの?」

 ずっとヒナタの様子を見ていた家政婦が、ふと問いかけると、アカリ達のお世話をしていた家政婦達が少し困ったように目を合わせた

「それが……」






「やっぱり嫌です!お家でヒナタを待ちます!お母様が、街でヒナタを探してください!」

「アカリ、急にどうしたの?どうして嫌なの?」

 ヒナタがスヤスヤと気持ちよく眠っている眠るその頃、アカリは玄関で突然駄々をこねはじめて、レイナを困らせていた

「私、街には行きたくないです。お母様、私の分までヒナタを探してください」

「困ったわね……」

 何を言っても座り込んで動かないアカリに、どうしようかと手を焼くレイナ。側で二人のやり取りを見ていた家政婦達が、同じく困ったようにレイナに声をかけた

「レイナ様、あまり無理させては……」

「……そうよね。じゃあ、アカリ」

 名前を呼ばれて、レイナの方に振り向いたアカリ。少し険しい表情をしたレイナの顔を見て、思わず鞄で顔を隠した


「私はヒナタを探しに行くから、アカリはみんなとちゃんとお家で待てる?」

「うん。待てる」

 すぐに頷いて答えるアカリに、はぁ。とため息つくレイナ。隣で同じくふぅ。とため息ついた家政婦達の方に振り向いた

「クロスにアカリは家に残ると伝えてね」

 そうレイナが言った瞬間、突然座っていたはずのアカリが立ち上がり家政婦達にグイグイと近づいてく

「えっ?お父様は、まだお家にいるの?」

「ええ、ですがもう少しでヒナタ様を探しに行くと言って……」

「出る前に、会わなくちゃ。お母様!ヒナタをちゃんと探してね!」

 そう言うと、バタバタと大慌てで家の中に戻ると、廊下をドタバタ足音を立てて走り去っていった

「アカリ様、待ってください」

 見えなくなったアカリを数名の家政婦達が、大慌てで追いかけてく。すると、家政婦達との追いかけっこが楽しくなったのか、アカリの楽しそうな声が家の中から聞こえてきた


「……もう、本当に困った子ね」

 アカリの声で緊張感が少しほぐれたのか、クスッと笑うレイナ。隣でアカリを追いかけず残っていた家政婦達もクスッと笑っていると、段々と聞こえなくなってくアカリの声。それと共に、レイナの表情に緊張感が戻って、家政婦達に少し重い雰囲気で声をかけた

「アカリのことよろしくね。私はヒナタの様子を見たあと、本を探しに行くわ」

 レイナの言葉に、表情が一変して険しくなった家政婦達。一人歩きはじめたレイナの後ろ姿を見届けながらペコリとお辞儀をしながらレイナに返事をした

「わかりました。レイナ様。お気をつけくださいませ」

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