第2話 みんなに内緒で真夜中の冒険

「お父様、またお出掛けするんですか?」

「ああ、またしばらく帰ってこれないかもしれない。ゴメンね」

「ううん。お仕事なら仕方ないです……」

 夜、ベッドに入ってクロスとお喋りをするアカリ。優しく頭を撫でられながら言われても、少し不満げな様子で頷いている。隣で一緒に眠るヒナタも二人の話を聞いてしょんぼりとして、顔を毛布に少し顔を隠している

「そうだ。お土産、買ってきてくださいね!」

 と、突然そう言いながら、体を起こしてクロスの手をぎゅっとつかんだ

「私、お菓子がいいです!甘いお菓子!」

「私もお菓子がいいな!」

 アカリの言葉につられて、ヒナタも体を起こして話しに入ると、お土産のお菓子について、二人の話が盛り上がり、眠そうだった二人が目が覚めて、少し困った表情で二人の会話を聞いている





「二人とも、おやすみ……」

「おやすみなさい……」

 長かったお喋りがやっと終わり、眠る時間となって二人の寝室から出ていくクロス。パチンと電気を消す音と、パタンと部屋の扉が閉まる音が聞こえると、静かになった二人の部屋。二人ゆっくりと体を動かすと、窓からの月明かりを頼りに見つめ合う

「お父様、しばらく会えないんだ……」

「お仕事だもん。仕方ないよ」

 と、部屋の外から起きていることに気づかれないように小声で話す二人。すぐには眠れず、目を強くつぶったり、少しお喋りをしていると、突然アカリがガバッと体を起こしベッドから降りた

「ヒナタ。起きて」

「えっ?なんで?」

「今から、お父様の書庫に行ってみよう!」

「えー……。怒られちゃうよ……」

「大丈夫だよ、どうせ眠れないでしょ?」

「そうだけど……」

 突然のアカリからの提案にヒナタが戸惑っていると、部屋の扉を開けて出ていこうとしているアカリを見て、慌てて飛び起きベッドから降りたヒナタ

「アカリ、ちょっと待って!」

 ベッドの側にあるテーブルに置いていた本を急いで取ると、先に廊下を歩いていたアカリの所に走って追いかけていく






「……ねぇ、アカリ。やっぱり止めようよ」

 廊下の電気が消されて、薄暗い廊下を足音をたてないように、ゆっくりと歩く二人。アカリの服を強くつかんで後ろを歩くヒナタに、アカリがクスッと笑う

「ヒナタは怖がりだなぁ」

「だって、家政婦さん達もいないし……」

「みんな疲れて休んでるんだよ……」

 と、話をしていると突然歩くのを止めたアカリ。その後ろを歩いていたヒナタがアカリの背中に顔をぶつけた


「アカリ、どうしたの?」

「電気ついてる……」

 そう言いながらアカリが指差す扉の隙間から、うっすらと見える光。その光が見える部屋に恐る恐る近づいて、そーっと音をたてないように扉を開けると、たくさんの大人達がみんな緊張した面持ちで、部屋の真ん中にいるクロスを見つめていた。目を閉じ集中している様子のクロス。ふぅ。と深呼吸すると、ゆっくりと話はじめた

「では、少し不本意ではあるが始めてみようか……」

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