第24話
秋文が来てからの一週間は、目まぐるしく毎日が過ぎ去った。毎日語り合い、随分と仲良くなった…………気がするのだが。
ひかりと翔太とも更に仲良くなり毎日が楽しかった。自転車で二人で出勤して、二人で帰宅するのも楽しかった。
清吾は秋文の事を昔からの親友のように感じた。秋文の方も自分の事をそう思っていてくれたらな、と清吾は仄かに期待をしてしまっている自分がいるのに気がついている。そんな親友のような存在など今まで一人も居なかった清吾だけに、相手がどう思っているのかは、とても気になった。
恐らく秋文には友人が沢山いるだろうし、勿論親友と呼べる人間も幾人か居ることだろう。その中の一人に清吾は入っているのだろうか? 自分がそう思っているからと言って相手もそう思っているとは限らない事を、例え人間関係の希薄だった清吾でも解っている。
流石に、そこまで子供では…………無い。
そんな恋する乙女のような考えを持ってしまう自分が情けなくも腹立たしくも思う。思うのだが、やはり清吾の中には秋文に好かれたいと思っている自分が存在しているのは確かである。
外はずいぶん涼しくなり街路樹の葉が黄色に染まりだした。
ウロコの館の庭の木々の色は変わらず緑色であるが。
清吾はこの季節が一番好きなのだ。清吾にとって一番過ごしやすい季節だからである。涼しくなって来たなと感じだすと、あっという間に寒くなる。ほんの短い期間しか味わえない貴重な季節である。街も山も空も夜空も空気も全てが綺麗で何もないのに浮かれた楽しい気分になる。
そんな土曜日の朝、清吾は激しいノック音で飛び起きた。昨夜も遅くまで清吾と秋文は二人で呑み明かしてそのまま眠ってしまったのだった。秋文はまだ床の上でイビキをかいて眠っている。
清吾が慌ててドアを開けると、ひかりと翔太が立っている。
「清吾さんに、お客様です」
ひかりは、少しぎこちない笑顔を見せた。
嫌な予感がした……。
「応接間にお通ししましたが…………」
「はい、ありがとございます」
清吾は答えたものの、客に心当たりは全くない。
「ん、むお? どうした? 」
背後から声がする。どうやら秋文が目覚めたようだ。
清吾は、秋文の問いには応えずに兎に角、歯を磨いて応接間に急いだ。
部屋のドアをノックして開けると、ソファに女性が座っていた。テーブルにはコーヒーが二つ、ひかりが用意してくれていたようだ。
女性は清吾が部屋に入るとソファから立ち上がった。
率直に美人だと思った。可愛い顔だとも思った。清吾の正面に立つ女性は、ウェーブがかったロングヘアーに、意志の強さを感じる少し吊り上がった目、小さな唇、好みの差はあれど誰がどう見ても完璧な美人である。
清吾は過去に彼女に会った事など無いし、見た事も無い。初めて見る顔である。これほどの美少女なら、一度でも会えば、絶対に忘れるはずなどないと断言できる。
ひかりが間違えて応接室に通してしまったのだろうか? イヤ彼女に限ってそんな事は断じてあり得ない。
清吾はソファ前に立つ女性を慎重に見た。
そして明るく一言「どうも、お待たせいたしました! 」と精一杯の感じの良い声をだして女性の前に行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます