第26話ドラゴンVSジークフリート【後編】
一度、ガウェインとジークフリートによってKO寸前まで追い込まれてしまった俺とドラゴン。
しかし、ドラゴンの力を新たな境地まで高めることに成功した。
これでガウェインとジークフリートに勝利できるかどうかはわからない、だがもう後ろ向きな考えはできない。
「うりゃああああ!!」
「グオッ・・・、何だこの力は?明らかに今までとは違う、ドラゴンの力をここまで使いこなせるようになったというのか・・・?」
『グヌヌ・・・、ドラゴンめ。竜也と一体化するとは・・・、そこまで本気になるとは思わなかった』
俺はガウェインに向かって拳をぶつけていった、ガウェインも今度ばかりは俺をあしらうのを止めて、本気で俺に挑むようになった。
「クソッ、もう一回倒してやる!!」
ガウェインはもう一度、あの必殺技を繰り出してきた。
「ベルセルク・ギガ・ストレート!!」
ガウェインの拳は俺に避けられ当たらなかった、今度は俺が必殺技を使う番だ。
「スタンピング・タイラント!!」
俺の拳はガウェインの顔面にきまった、今度はガウェインが動かなくなった。
『アーット、今度はガウェインが動かなくなった!!一度倒れたかに見えたタイラント城ケ崎が奇跡の復活をして、まさかの大逆転だ!!さあ、タイラント城ケ崎の勝利となるのでしょうか!?』
しかしガウェインはレフェリーのカウントがファイブという所で、立ち上がった。
「はぁ・・・はぁ・・・、城ヶ崎!!一度奇跡を起こしたくらいで、俺とジークフリートを倒せると思ったら大間違いだぞ!!」
『それは我も同じだ、因縁の再開を果たしたんだ!!再び負けることなんてあってはならないのだ!!』
ガウェインとジークフリートの闘志は本物だ、俺とドラゴンも闘志では負けない。
しかしここでレフェリーからブレイクタイムの合図がかかった。
俺はドラゴンの力を一旦落ち着かせて、コーナーの端に座った。
一方のガウェインも、ジークフリートの力を一旦抑えたので、装着していた鎧が消えた。
「竜也、よく立ち上がった。これからは気力と体力の勝負だ、焦らずに行け。」
「竜也君、ここからは激しい戦いが待っている。わかっているだろうけど、ここが正念場だよ。」
岩井と獅童が横から応援の言葉をかけた。
そして向かいにいるガウェインを見ると、イグニスがガウェインに何か言っていた。
おそらくここで何か仕掛けてくるだろう・・・、だが俺はどんな卑怯な手にも屈しない。
ブレイクタイムが終了した、俺とガウェインの戦いが再び始まった。
「うおおおおお!!」
「はあああああ!!」
俺とガウェインは再びお互いの力を発動させた。
「行くぞ、竜也。」
するとガウェインはこれまでとは違う動きをしてきた、明らかに何かを仕掛けようとしている。
「この動きは・・・、これまで見てきた武術ではない!!」
ガウェインの攻撃は鋭く、俺の腹部や足のすねを狙って攻撃してくる。
「まさかこれは・・・、独特の格闘技術!!こんなの出されたら・・・、やりにくくてしょうがない・・・!」
『どうやらこれは、やつらが独自に編み出した体術・・・。確かにこれでは竜也も対応できないよな・・・。』
俺とドラゴンは、再びアーサーとジークフリートの攻撃を受け続ける防戦一方の展開が始まった。
『こ、これはなんという動きなのでしょうか!!竜也選手、まるで手も足も出ません!!これは今まで多くの試合を実況してきましたが、こんな体術を使う格闘家は見た事がありません!!』
俺は見切れない動きに、苦戦した。
この状況をどう打破するのか、俺は戦いながら考えた。
「ドラゴンの力があっても、この状況ではいずれやられてしまう・・・。集中するんだ・・・、そしてガウェインに攻撃をぶつけるんだ」
俺はガウェインの動きをよく観察した・・・、そして一瞬の隙を捕らえて拳を放った。
「グハッ・・・!!そんな、バカな!!」
俺の拳はガウェインのアゴにきまった。
ほんのまぐれに過ぎないが、そのまぐれが俺に攻撃のチャンスを与えた。
「逆鱗のフィスト!!」
俺はガウェインに拳を連打した、ガウェインに隙を与えない、そしてガウェインが纏っている鎧を破壊する!!
「グワアアアアアア!!」
『な・・・、なんて連打だ!!まるであの時のドラゴン・・・、それ以上のパワーだ。城ヶ崎竜也・・・、お前はドラゴンの力をここまで引き出せるというのか?』
とにかく俺は我を忘れる勢いで殴り続けた、そして渾身の力でアッパーカットを繰り出した。
この攻撃でジークフリートの力によって生み出された鎧は完全に破壊された。
そしてガウェインは倒れた。
『またもや、竜也選手がガウェイン選手を倒しました!!猛烈な逆鱗のフィスト!!これは大きなダメージを与えたはずです!!』
しかしガウェインは再び立ち上がった、そしてハハハと笑いながら俺に言った。
「竜也・・・、ジークフリートの鎧を砕くとは大したものだ。その力だけは褒めてやろう。だが、ジークフリートの力はこんなものではないという事を、思い知らせてやるぞ!!」
するとガウェインは、ジークフリートの力を更に高めた。
そして前よりも輝く鎧をその身に纏った。
「なっ・・・!!また、鎧を装着したか。」
『しかも、前よりもパワーが違う・・・。気を抜いたらやられるぞ!!』
「フハハハハ!!力がみなぎって止まらない・・・!!最高だ、これならどんな相手やモンスターだって、勝てる!!」
ガウェインは俺に攻撃をしかけてきた、俺も負けじと左ストレートを放った。
しかしガウェインの攻撃は俺に決まったが、俺の左ストレートはガウェインに放つ前に不発に終わった。
ガウェインの身体能力は段違いに上がっていた、ジークフリートの力ってまだまだ伸びしろがあるというのか・・・!!
『またもやガウェイン選手が竜也選手を圧倒しています!!やはりドラゴンは聖騎士に倒される運命なのでしょうか!!』
「竜也!!しっかりしろ、お前なら勝てるぞ!!」
岩井の応援が聞こえた、俺は再び本気の気持ちを取り戻した。
俺はドラゴンの力をフルに使ってガウェインに向かっていった、とにかく攻撃を続けて、ガウェインに致命傷を与えてやる!!
「竜也・・・、お前は愚かな男だ。どんなに拳を振るって暴れても、俺には敵わない。お前にはドラゴンという名前がお似合いだ、本当に力任せなことしかできない。その点俺は、お前とは違う。暴れるだけではなく、相手の急所を一撃でつくスキルもある。お前はガキの頃から独学で格闘技術を学んできたそうだな・・・。その心意気は見事だ、しかし俺の学んできた格闘技術はそれを上回る。だから・・・、竜也はずっと俺には勝てない。お前はずっと・・・、騎士には勝てないドラゴンだ・」
ガウェインは鼻で笑いながら、俺を攻撃し続けた。
ガウェインの言う『騎士に勝てないドラゴン』とは、力だけが強いだけの愚か者という意味なのだろう・・・。
ガウェインの言葉は俺の人生に合っていた・・・、ガキの頃の俺は力だけで周りを跳ねのけてきたが、周りの姑息な罠にははめられ続けたものだ。
だが、俺は知恵を使って罠を仕掛ける戦いよりも、真っ直ぐに相手に立ち向かう戦いの方が好きだ。
だから例え惨めで醜くても、俺は俺の戦いでやる。
『さあ、城ヶ崎竜也選手!!ガウェインに懸命に挑んでいきます!!対するガウェイン選手は確実に竜也選手に重い一撃を与えていきます!!これはもはや、負けん気同士の対決です!!戦いは激闘から死闘へ、そして二人だけの世界への境地へと届きました!!』
しかしそんな時だった、突然会場の門が開いて警察官が数十人も会場へとなだれ込んできた。
「この試合は中止だ!!ビリー・ガウェイン、お前を公務執行妨害罪で逮捕する!」
声のする方を見ると、猪名川が拡声器を持って怒鳴っている。突然の事態に、俺と岩井たちは呆然としていた。
『おい、これはどういうことだ?』
「おそらく、あの時の黒いマスクの男がガウェインであることを突き止めたんだ。あいつは警官二人を、病院送りにしているからな・・・。」
だからって、このタイミングで来るというのもどうかと思うが・・・。
「チッ・・・、日本の警察は強引だな。」
ガウェインは舌打ちしながら言った。
そして警官二人が、ガウェインを逮捕するためにリングに上がってきた。
「部外者は、くたばれ」
ガウェインは警官二人をいきなり殴った、警察官二人はあっけなく気絶した。
「な、貴様!!さらに罪を重ねるつもりか!!お前ら、取り押さえろ!!」
今度は十人の警官がガウェインを取り押さえるために、リングに上がった。
しかしガウェインは、人並み外れた動きとパワーで十人もの警察官を倒してしまった。
「さあ、俺を逮捕できるものなら、やってみろ」
ガウェインはリングの近くにいる警察官に不敵の笑みを浮かべながら言った。
猪名川たちは、驚きと恐怖で動けなくなっていた。
「お・・・お前ら、何をしているんだ!早く取り押さえろ・・・。」
猪名川が号令をかけたが、警察官たちはビビッて足が動かない。
号令をかけた猪名川も、声が引きつって顔が青くなっていた。
俺は警察官たちに向かって言った。
「猪名川、試合を続行させてくれ!!」
「え!?竜也、お前何言っているんだ?」
「ガウェインは俺が倒す!!そうしたら、ガウェインを連行してくれ。お前らわかっているだろ?俺たちではガウェインに敵わないって」
「そんなの認められん、俺たちはガウェインを逮捕しに来たんだ。なあ、お前ら?」
猪名川は周りの警察官に同意を求めたが、誰一人として黙り込んだままだ。
猪名川は状況を察し、俺に言った。
「・・・試合の続行を認める。」
「ありがとう」
「礼を言うな、これは腰抜けな俺たちの大きな失態だ」
猪名川たちは気絶している仲間を運びながら、すごすごと会場から去って行った。
『さあ、試合が止まっていましたが・・・。ただ今、警察から試合続行が認められました。皆様、大変お待たせしました。これより、試合が再開します!!』
「竜也、ありがとよ。これで試合ができるぜ。」
「ああ、だがこの試合に勝利するのは俺だ!!」
こうして俺は再びドラゴンの力を使い、ガウェインに向かって行った。
するとここで、またあの声が聞こえた。
『竜也・・・負けないで!!』
俺は思い出した、これはセレナの声だ。
彼女の声は亡くなった直後に聞いて以来だった、もう聞けないものだと思っていたが、聞けて心のどこかで良かったと感じている。
『竜也・・・、あなたはみんなのドラゴンよ。力強くてカッコいい、みんなのためのドラゴンなの。だから、負けないで!!』
そしてセレナの声は止んだ、無意識な自信が俺に新たな力を与える。
「いける、俺は勝てる・・・!!」
俺はガウェインに向かっていったが、以前とは違い自分が不利な状況に追い込まれていることは、微塵も考えなかった。
「そんな・・・、パワーアップしたのに・・・、俺が押されているだと!!こんなこと、有り得んぞ!!」
『竜也選手が強い!!そう、我らがタイラント城ケ崎!!君は聖騎士に負けるドラゴンではない、どんな相手にも負けないみんなが求める理想のドラゴンだ!!竜也、お前は一人ではない、みんながついているぞ!!負けるな城ヶ崎竜也、負けるなタイラント城ケ崎!!』
「行け――っ、竜也!!負けるな――!!」
「いけるぞ、お前なら勝てる!!」
「竜也さん、負けないで!!」
「やっちまえ!!そのまま、ぶっ飛ばせ!!」
俺への応援が会場内に響き渡った、アメリカ代表以外の人たちが俺の応援を始めたのだ。
『竜也、これはいいぞ!!お前にカリスマの才能があるんだ!!お前はみんなの希望なんだ!!』
ドラゴンは俺に力強く言った。
「なんだこれは・・・!!なんで竜也の応援をするんだ!!ドラゴンはモンスターで、聖騎士は英雄だ!!悪いモンスターよりも、誇り高い英雄の方がみんな好きなはずだろ!!」
ガウェインは大声で喚きだした、その隙に俺は技をきめた
「スタンピング・タイラント!!」
ガウェインは再び倒れた、レフェリーのカウントが入る。
『さあ、また竜也選手がガウェイン選手を倒しました!!今度こそ、今度こそ!!竜也選手が勝利するのか!!』
しかしガウェインはなおも立ち上がった、そして俺に言った。
「俺は聖騎士だ・・・英雄だ・・・選ばれた者だ!!ジークフリート、俺に与えられるだけの力を寄こせ!!」
『ガウェイン、お前まさか我を・・・!!』
ジークフリートが狼狽えた声を出した。
「うおおおおおーーーーーーっ!!」
『やめろおおおおおーーーーーっ!!』
『これは、かなりまずいぞ・・・。』
ドラゴンが言った、そんなことは俺だって見ればわかる。
「あいつがまた強くなるということだろ?」
『それもあるが、ガウェインの命に関わる事だ。あいつはジークフリートを全て取り込むつもりだ、そんなことしたら力に飲まれてガウェインの肉体に尋常じゃない負荷がかかってしまう・・・』
「そんな・・・」
『ガウェイン!!やめてくれ、お前が死ぬことになるぞ!!』
「黙れ、ジークフリート!!お前は俺の力になっただろ?だったらその義理を果たせ!!」
『ゔわぁぁぁっーーーー!!』
ジークフリートの訴えは虚しく、ジークフリートは断末魔の悲鳴を上げ、ガウェインに完全に取り込まれてしまった。
「フハハハハハハハ!!どうだ、この俺の姿を!!英雄に見えるだろう?フハハハハハハハハ!!」
ガウェインは高らかに言った、しかし俺には力に憑かれて飲まれた愚か者にしか見えない。
『これはどういったことでしょうか!?ガウェイン選手が、水色の大男と化してしまいました!!聖騎士の気高き姿は面影も無く、水色の鎧を装着した粗暴な兵士の姿がそこにあります!!』
俺はとにかくこいつを止めなければと思った、試合が終わっても暴れる可能性が高いからだ。
「いくぞ、ガウェイン!!」
「来い、ドラゴン!潰してやる!!」
ガウェインは俺に向かってパンチを出した、しかしそのパンチは簡単に避けられた。
力に飲まれているのか、体が上手く使いこなせていない。腕をメチャクチャに動かしているに過ぎず、力を得た代わりに格闘家としての腕が落ちたと感じた。
「うりゃあ!!」
ガウェインへの攻撃は確実に当たっている、ただパワーの差が大きくガウェインに効いているとはあまり言えない。
しかし確実に当たっていれば、ダメージは身体に現れる。
ガウェインは徐々に勢いを失っていった。
「ハァ・・・・ハァ・・・、クソーーー!!」
もはやガウェインは俺の敵ではなくなっていた、俺はここで最後の一撃をきめることにした。
『ここで決めるぞ!!竜也!!』
「おう、ドラゴン!!」
俺はドラゴンの力をフルに使って、ガウェインに渾身の一撃を放った。
ガウェインも俺に向けて雑な左ストレートを放った。
「うおおおおおおおーーーっ!!」
「タイラント・ファイヤー・パワーフォース!!」
互いの拳は激突し、力で俺が勝った。
俺の拳はガウェインの顔面にきまり、ガウェインは仰向けに倒れた。
そしてガウェインから力が抜けていき、ガウェインは立ち上がることは無かった。
『ついに・・・、ついに・・!!決着ーーーーーーっ!!勝者・城ヶ崎竜也選手!!やりました、ついにタイラント城ケ崎が全世界格闘技フロンティアトーナメントで優勝しました!!まさにドラゴンキング!!彼はこれまで多くの試練の戦いを果たして、奇跡の大逆転を連発し、優勝の栄冠と勝利の聖杯を手に入れました!!城ヶ崎竜也の戦いはまさに不屈の賜物!!彼の精神力にしかできないことです!!タイラント城ケ崎、君は英雄を冠するドラゴンになった!!君は多くの歓声を受けて、大空へと羽ばたくのです!!竜也・竜也・竜也ーーー!!』
ついに俺は大会の優勝という頂にとどいた・・・、俺は勝利の喜びを感じていた。
「ついに俺は優勝した・・・そうだ、俺は優勝したんだ」
「ああ、よくやった!!お前は日本代表を優勝に導いたんだ!!すげえよ、お前はとんでもない奴だ!!」
岩井は俺に絶大な賞賛を送った。
松井・目白・獅童の三人も俺の勝利を祝福した。
『竜也、お前は世界の歴史の一ページに新たな記録を残した。それは凄く偉大で、栄光かがやく証だ。いつまでも忘れずに、心の中に持ち続けるがいい』
俺は勝利の咆哮をあげ、世界からの祝福をその身に浴びた。
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