第25話ドラゴンVSジークフリート【前編】

ついに運命の一日が幕を開けた。

俺はいつも通り起床して、顔を洗い朝のトレーニングを始めた。

『竜也、今日はジークフリートとの決戦だ。あんまり無理はするなよ』

ドラゴンが言った。

そして四十五分ほどトレーニングを続け、そして朝食を食べた。

「竜也さん、いよいよ決勝戦ですね」

「俺たち、竜也さんのこと応援していますよ」

目白と松井が俺に言った、今更応援するなと言っても絶対に応援するだろう。

「竜也さん、絶対に負けないでください!!」

獅童は力強く言うと、「愛は勝つ」を歌いだした。

「やれやれ・・・、どうしてみんなこんなに俺の勝利に期待しているんだ?」

俺は呆れながらも、心のどこかで嬉しさを感じていた。

朝食を食べ終えて、俺は試合の用具を入れたバッグを持って岩井の所へと向かった。

「おう、竜也。用意はできたか?」

「はい、いつでもいけます」

「よし・・・、それじゃあ決勝戦へ行こうか」

そして俺と岩井たちは車へと乗り込んで、日本武道館へと向かった。

車の中で俺は決勝戦への闘志を燃え上がらせていた。

「ガウェイン・・・、お前がアーサーの旧友とかマッチ・クリエイターの手先とかそんなことはどうでもいい。俺はお前とジークフリートと戦えればそれでいい。俺は今まで格闘選手の好敵手に出会ったことはなかった・・・、ガウェインが初めてできた好敵手だ。だから俺は全力とドラゴンの力でお前を倒す、だからお前もかかってこい!!」

俺は闘志の炎を心の中で燃え上がらせ、早くリングへ上がりたい気持ちを高めていった。








日本武道館に到着すると、武道館の入り口になんとイグニスの姿があった。

イグニスは白いタキシード姿で、三人の連れと一緒に武道館へと入っていった。

「あの野郎・・・、わざわざ決勝戦を見に来たのか?」

俺はイグニスの背中に嫌悪感の眼差しを向けた。

しかしそんなことに気を取られてはいられない、俺はすぐに控室で着替えて試合のモチベーションを高めた。

「よし・・・、行くぞ!!」

『竜也・・・、行こうぞ!!』

俺とドラゴンは、コロッセオの舞台へと歩いて行った。









『さあ、ついにこの時がやってきました!!全世界格闘技フロンティアトーナメント決勝戦がーーーーーーっ、やってまいりました!!それではこの決勝戦に選ばれた、この大会で無敗を守り抜いた二名の選手の入場です!!』

まずは俺から入場した。

『赤コーナ、日本愛知県出身。その巨体と鋭い眼差しから『ドラゴン』と呼ばれ、多くの選手から恐れられ、多くの格闘ファンから人気が高い我らがドラゴンキング!!

愛知の巨竜・タイラント城ケ崎!!』

俺はリングで大声を出した、それは咆哮のごとく会場内に響き渡った。

『青コーナ、アメリカアリゾナ州出身。アーサー王伝説の円卓の騎士の名の一つを授かり、男気と勇猛さを兼ね備えた精神を強さにして、あらゆる相手をたった数発の拳で倒してしまう、無双の強さを持つ騎士がやってきた!!アメリカの無双聖騎士・ビリー・ガウェイン!!』

ガウェインは叫ぶことなく、俺に向かって言った。

「今日はお前の首を取りに来たぞ、城ヶ崎竜也!!お前とドラゴン、俺とジークフリート。どちらが強いか、ハッキリさせようぜ!!」

「ああ、そうするとしよう。かかってくるがいい」

『おおーっと、これは互いに挑発しています。この決勝戦、この二人にとっても大きな意味のある試合になるようです!!』

俺はドラゴンの力を最初から発動させた、対するガウェインもジークフリートの力を使ってきた。

『ドラゴン、我らの因業に今こそ決着をつけよう』

『ああ、今回は圧倒的に決着をつけてやる』

ドラゴンとジークフリートも睨みあっている。

そして運命のゴングが鳴った。

『レディー・・・、ファイト!!』

ゴングの音の直後に俺は先制ジャブを出した、ガウェインはかわして俺に左ストレートを繰り出した。

そして俺は左ストレート、ガウェインは右ストレートを出して、互いの顔面に互いの拳が直撃した。

そしてその後も互いの拳が互いの体に直撃した、互いに一歩も引かずに戦い続けた。

「さあ、これは大激闘になっております!!互いに無敗を守り抜いた選手、実力は互角ということです!!さあ、これはどちらが先に決定打を打てるのでしょうか?」

ドラゴンもジークフリートに負けまいと、攻撃を繰り出す。

もう顔や体の痛みなんかどうでもいい、俺はただ目の前のガウェインを絶対に倒すという執念のままに戦っている。

『さあ、激しい殴り合いが続いています。このリングから戦いの激しい熱意が伝わってきます!!これは稀に見る大激闘になっております、こうなるともうどうなるのか気になってしまいます!!』

俺はガウェインの腹部にパンチを入れた、ガウェインはバランスを崩してグランドに倒れた。

そしてその隙に、肩固めをガウェインにした。

『あーっと、竜也選手!!肩固めを仕掛けてきました!!竜也選手の寝技は強烈だ、これまで多くの選手が彼の寝技にギブアップをしてきました!!さあ、ガウェイン選手は竜也選手の寝技から抜け出すことはできるのか!!』

俺は渾身の力でガウェインを抑え込んだ。

「やるな・・・、だがこれくらいでは甘いぞ!!」

なんとガウェインは俺の肩固めを、力技で打ち破って脱出した。

「な・・・!!俺の肩固めを破るなんて・・・、しかもドラゴンの力で抑え込んでいたのに・・・。」

今度は俺がグランドに倒れ込んだ、そして今度はガウェインに肩固めされることになってしまった・・・。

『あーっと、今度はガウェイン選手が竜也選手に肩固めーーー!!今度は竜也選手が、抑え込まれた!!あっという間に立場が逆転!!竜也選手、逃げ出すことはできるのでしょうか!!』

俺は力を入れたが、ガウェインの力がこれまでの相手以上に強く、抜け出すことができない・・・。

「あ・・・、この・・・!!フンッ・・・・!!」

「流石に抵抗が激しいな、だが俺から逃げることはできない!!」

ガウェインの抑え込む力が更に強くなった、あいつはこのまま俺の肩を潰すつもりか?

『竜也っ!!諦めるな!!』

ドラゴンの力強い声がした。

こんなとこでガウェインに負けたくはない!!

「うがぁぁぁっーーーー!!」

「なっ・・・!!なんだこのパワーは!?」

俺はガウェインの肩固めを破り、その勢いでガウェインはネットにぶつかった。

「クソッ・・・やるじゃねえか」

「ふぅ・・・ふぅ・・・、まだくたばらんぞ!!」

俺とガウェインは再び殴りあった、ドラゴンとジークフリートも爪と剣を交えて、大激闘を繰り広げている。

『さあ、竜也選手がガウェインの肩固めから脱出したぞ!!再び、互いの殴り合いになりました!!戦いは常に盛り上がっております!!まさに死闘です!!こうなるともはや試合とは思えません!!私もこの激闘を例える言葉が思い浮かびません!!さぁ、これからどうなるのかーーー!!』

俺もこの戦いを何と呼んだ方がいいのかが、わからない・・・。

俺はガウェインから離れると助走をつけて飛び上がった。

「来るか、あの技が!!」

ガウェインも拳に力を込めて俺を迎え撃つ。

「スタンピング・タイラント!!」

「バスターソード―パンチ!!」

俺とガウェインの拳が衝突した、ドラゴンとジークフリートの力が重なっていることで、物凄い衝撃波が俺の体に襲いかかった!!

『あーっと!!互いの拳がぶつかった!!お互いに力が込められているのか、お互いに拳が合わさったまま離れません!!さあ竜也選手がガウェイン選手を押しつぶすのか、ガウェイン選手が竜也選手を吹っ飛ばすのか!!』

俺は必死に拳を押した、しかしガウェインを押しつぶすことができずに互いの力は拮抗して、俺は弾かれてしまったが、何とか着陸することができた。

「やはりスタンピング・タイラントでは、ガウェインを倒すことができない。やはりあの技を本気で使うしかない!!」

「やるな、竜也・・・。スタンピング・タイラントか、いい技だな。それなら俺もあれを使うとしよう・・・。」

するとガウェインのジークフリートの力が高まり、ジークフリートの力がガウェインの鎧となった。

「何だこれ・・・、これがジークフリートの力なのか・・・!!」

『ここ・・・、これはどういうことなのでしょうか!!ガウェインが、突然鎧を装着しました!!これは一体・・・、どうなっているのでしょうか!!』

「ハハハハハ、まさか全世界格闘技フロンティアでこれを使う事になるとは・・、でもそれがお前との戦いで良かった。」

ガウェインからは凄まじい闘気が感じられた、それはドラゴンの力を纏っている時の俺以上のものだ。

『竜也・・・、どうやらガウェインとジークフリートは想像を大きく超えた強敵だ・・・。さすがの我でも、勝てると言えない・・・。』

ドラゴンの声が暗い、こんなドラゴンの声を聞くのは初めてだ。

しかし俺は引くに引けないとこまできた、こうなったら行くしかない!!

「何言っているんだよ、ドラゴン・・・。俺とお前は最初から敗北なんて考えないだろ?勝敗なんて、戦闘の結果に過ぎないのだからな・・・。」

『竜也・・・、そうだったな。我は怯えていたようだ、お前に鼓舞されるとはな・・・。』

ドラゴンは俺に更なる力を与えた、俺の目から足の指先まで力がみなぎってくる。

「ほう、貴様も本気を出したか・・・。それならかかってくるがいい!!」

「うおおおお!!」

俺はガウェインに向かって突っ込んでいった。

しかし俺のストレート・パンチ・アッパーカット・フック・ローキック・・・、俺の全ての攻撃はガウェインに全く通用しない。

「うりゃあ!!そりゃあ!!」

「ハハハ、効いてないぞ!!竜也、もっと本気で来い!!」

ガウェインは俺の攻撃を受けながら、時折ストレートで反撃する。

それはまるで俺が弄ばれている・・・、いや確実に弄ばれている。

力の差がここまで広がっていることを、俺は戦いの中で初めて感じた。

『あーーっと、ここでまさかの事態が起きてしまった!!あのタイラント城ケ崎が、全く手も足も出ません!!ガウェイン選手、このまま竜也選手を倒してしまうのでしょうか!!そして、タイラント城ケ崎の運命やいかに!!』

俺の攻撃が通用しない・・・、それは俺の心の中で憤りになり不安に変わっていく。

もしかしたら、この決勝戦で俺は格闘家としての全てを失ってしまうかもしれないと、刹那に想像してしまった。

だけどその想像がこの戦いの果てにある未来だとしても、俺はこの戦いから逃げない。

「こんのお!!うりゃあ!!」

「フハハハハ、楽しくなってきたなあ!!」

ここでガウェインのストレートが俺の脇腹に決まった。

そしてガウェインは、グランドに倒れた俺に必殺の一撃を放った。

「ベルセルク・ギガ・ストレート!!」

ガウェインの拳は俺の腹部にめり込み、そのエネルギーは俺の精神に核爆弾を投下をするほどの衝撃を与えた。

「あ・・・、うぇっ!!」

俺は血を吐いた、まるで剣に貫かれたかのような痛みが俺の体じゅうに走った。

『竜也・・・、大丈夫か!!』

『どうだドラゴン!!お前の力を持ってしてでも、ガウェインと私には敵わない。さあ、今ここでとどめを刺してやる!!』

『クソッ・・・、我もここまでか・・・。』

俺の視界は暗くなった、生死の境へと吸い込まれてしまったようだ。

『アーットーーー!!タイラント城ケ崎が、何と重傷を負ってしまったー!!これは夢なのか、いや現実です!!今ドラゴンは、聖騎士の剣に腹を貫かれて動かなくなっている。これで無敵のドラゴンキングが死んでしまったということだ、さあレフェリーのカウントが始まります・・・。』

「テン・ナイン・エイト・セブン・・・」








「竜也ーーーっ、立つんだーーー!!」

「おい、立てよ!!まだ行けるんだろ、竜也さん!!」

「竜也くん・・・。」

「チクショウ・・・、日本代表はここまでなのか?」

生死の境から、岩井たちの声が聞こえた。

そうだ、ここで立ち上がらなければ俺は負けてしまう。

俺は生死の境から抜け出そうと走り出した、しかし走っても走っても抜け出せない・・・。

俺はここで・・・。

『竜也、大丈夫か?』

なんと、ドラゴンの声が聞こえた。

「・・・ドラゴン?」

『竜也、お前はまだ立ち上がりたいか?もしそれが嫌なら、このまま眠らせてやろう。しかし立ち上がるというのなら、我と一体になって再びガウェインとジークフリートを倒しに行こうぞ。さあ、どうする?』

答えは決まっている、俺はドラゴンに訊ねた。

「お前と一体になれば、俺は強くなれるのか?」

『無論だ、ということは立ち上がるのだな?』

「もちろんだ、あいつをぶっ飛ばしに行こう!!」

『よかろう、では共に参ろう!!』

こうして俺はドラゴンの力により、再び立ち上がることができた。








「・・・これが、ドラゴンと一体になるという事か。姿は変わってないが、力は大幅に増えたな・・・。」

『うわああああーーーーーっ!!タイラント城ケ崎が・・・、まさかの大復活!!カウント終了直前、奇跡が起こりました!!さあ、このまま反撃できるのか!?』

「竜也、よくぞ立ち上がった!!お前は最高だ!!」

岩井と松井たちは、俺の復活に喜びで狂喜乱舞した。

「バカな・・・、とどめをさしたはずなのに・・・。」

『ドラゴンめ・・・、竜也に更なる力を与えたというのか・・・?』

ガウェインとジークフリートは表情が引きつっている・・・、さあ第二ラウンドの始まりだ。











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