第3話世界への扉と事故
合宿で初めての夕食を終えた俺は、自分の部屋へと戻っていった。
『それにしても、お前を追い詰める人間を見たのは下田以来だな・・・。』
ドラゴンが懐かしそうに呟いた。
「あの頃は俺も弱かったからな、自然とそうなっただけだ。」
『明日は日本以外の選手と戦うんだろ?恐怖とかワクワクするような、心臓が高ぶるような気分にはならないか?』
「ならない、俺はただ戦うだけだ。」
『そうか、さすがは選手だな。今日はもう遅いから、寝た方がいい。』
ドラゴンに言われるまでもなく、俺はベッドに入り込んだ。
翌日の午前五時三十分に起床した俺は朝食を食べ、岩井のところに集合した。
「竜也、おはよう。」
俺に挨拶したのは大阪の間宮だった。
「ああ・・・。」
「そっけないな・・・、それにしても昨日は驚いたわ。しょっぱなから岩井にケンカ売るなんて、あんたイカレているな。」
昨日ボロボロの俺を見ていた時とは違い、昔から知り合いのような距離感で話しかけてきた。
「・・・黙ってくれ、岩井が来るぞ。」
「そうやった、ほいじゃあ。」
間宮はすねたように俺から離れていった。
それからすぐに岩井がやってきた。
「みんな、おはよう。三日後から全世界格闘技フロンティアの戦いが始まる。最初の対戦相手は中国だ。特に強いのが、シャン・ガロウ二十三歳。去年デビューした新人だが、強さはずば抜けている。決して油断できない相手だ、お前は気を引き締めていけよ。」
俺は言われなくても、己の気を引き締めていた。
俺はいつも通り我流の自主練を始めた、やはり岩井が俺に声をかけてくる。
「昨日あれほど相手したのに・・・、まだ認めないのか?」
岩井の強さは認めるが、あれで岩井の全てを認めるわけがない。
「言ったでしょう、俺は簡単に人を信用しないって。」
「お前は才能と強さに自信があるようだな、だがそれだけではこの先の試合を勝ち進んでいくことができない。昨日お前と戦って、俺はお前の強さがわかった。お前は俺から何か感じ取らなかったか?」
「・・・伝説と呼ばれるぐらいには強いことがわかった、だがそんなのは俺の強さと関係ない。俺はただ、自分で武道を切り開いて進んでいくだけだ。」
「お前、強いけど寂しいな・・・。今日も好きにやってもいいが、俺の教えを受けたければいつでも声をかけてくれ。」
そう言って岩井は三人の監督へと戻った、岩井はどこか下田に似ていると思った。
でもそんなのはどうでもいい、俺は人の教えを受けるのは嫌だ。
何故なら最終的に絶対の信用を持てるのは自分自身、それは俺だけじゃなくこの話を読んでいるみんなもわかっているはずだ。
お昼休憩の時間、俺がスポーツドリンクを買おうと合宿所から一番近い自動販売機に小銭を入れていると、アーサーとよりによって大島がやってきた。
「ヘイ、リュウヤ。合宿は慣れたかい?」
「・・・ああ、それなりにな。ていうか、どうして大島がそこにいる?」
「昨日から近くにある知り合いの家に泊まっているんだ、これで君の近くにいつでもいられるよ。」
大島のアイデンティティは顔の広さがとてつもないこと、だからこんなストーカーみたいなこともできるのだ。
俺はため息をつきながら自動販売機からスポーツドリンクを取り出すと、合宿所へと足を向けた。
「ちょっと待ってよ、今日はトレーニングの様子を取材に来たんだ。」
アーサーは俺を呼び止めた、仕方なく俺はアーサーに言った。
「俺は自分でトレーニングをしているから、ここでのトレーニングをしていない。取材をしたいのなら、間宮って奴に当たってくれ」
「え?代表選手なのに、監督の言う事を聞いていないの?」
「アーサー、彼は昔から変わっていない。けど変わらずに貫いてきたから、竜也は強いんだ。」
「そういえば、顔つきとかはホームステイしていた頃と変わっていませんね。」
「もういいだろ、行かせてくれ。」
アーサーが道を開けたので、俺は再び歩き出した。
それから三日後、世界格闘技フロンティアがついに始まった。
世界格闘技フロンティアはトーナメント戦ではなく、開催側がランダムに選択したチーム一組で試合をする形式だ。
今日は日本VS中国、アメリカVSドイツ、フランスVSメキシコの三試合が行われる。
試合は互いの三人が一対一で戦い、二勝したチームに一点が入る。
そして最終的に全ての試合が終わった時に、一番点数が多いチームが優勝だ。
「いよいよ、始まるぞ。」
岩井の一言に、全員が真剣な顔になった。
だがこの試合に出たのは間宮・千堂・神宮の三人、しかも最後の三回戦でロウに敗北し一勝二敗で負けた。
俺は試合に出場できなかった不満が募り、俺はその日は不機嫌だった。
その翌日、俺が自主練をしていると岩井が声をかけてきた。
「悪いが次とその次の試合も、君は出場しないことにした。」
その一言に俺はキレてしまい、ドラゴンの威圧感で岩井を睨んだ。
「俺は・・・、ずっと試合に出れないのですか・・・?」
岩井は俺にたじろいだが、こう言った。
「いや、君を温存させたいんだ。君の強さが天性のものだということは知っている、だから終盤戦で勝ち続けるためにお前を温存させるんだ。」
岩井の意図がわかり、俺は落ち着いた。
「わかりました・・・、必ず試合に出させてください。」
「ああ、約束は守るよ。」
俺は自主練を再開した。
そして翌日、俺はバスで岩井と三人と一緒に武道館へと向かった。
今回の対戦相手はメキシコ、最も有力な選手はウィルア・カルパッチョ選手だ。
『今回は試合に出れるといいな。』
ドラゴンが俺に言った。
「まあな・・・。」
『おい、あいつを見ろ。』
ドラゴンが何かを伝えようとしている。
「あいつって誰だ?」
『一番前にいる者だ。』
ドラゴンが言っているのは、運転手のことだった。
「運転手がどうかしたか?」
『あいつ、何かしようとしている。故に気持ちがかなり緊張している。』
しかし俺には平然と仕事をしている運転手にしか見えない。
「一体、何を見ているんだお前は?」
俺は逆にドラゴンに訊いた、その時だった。
「うおわっ!!」
「なんやねん!!」
「うあっ!!」
突然、バス内の空間が狂ったように動き出した。
そしてドドドという轟音を鳴らしながら、街路樹や人をなぎ倒しいき、最終的にビルに突っ込んだ。
「驚いたよ・・・、生きていることだけでも奇跡なのに、骨折すらしていないなんて。」
緊急搬送された病院で俺を診断した医者の一言だ。
岩井・間宮・神宮・千堂の四人は一命は助かるも重傷、俺は全身に擦り傷ができつつも骨折した箇所はない。
「自分でも驚いています。」
「でも大事を取って今日一日は休みなさい。」
俺はそうするしかなかった、とても試合に出させろと言える空気じゃなかった。
目的を失った俺は、入院室の天井を見上げながら何も考えずにいた。
見上げているのも飽きた頃、アーサーと大島が入ってきた。
「リュウヤ、大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ。」
「・・・聞いた話ではかなり悲惨な事故だったということだが、君はかなり運がいいようだな。」
大島が笑いながら言った。
なぜあれだけの事故なのに重傷を負わなかったのか、それはドラゴンが俺を守ってくれたからだ。
『お前に死なれては我が困るからな。』
「ふう・・・、ありがとう。そういえば今日の試合の内容はどうだった?」
「日本VSメキシコ以外の試合は予定通りに進んだ、ただ日本は未だに無得点だから優勝は期待できないってさ。」
アーサーがため息をつきながら言った。
「そうか・・・、それでも俺は試合で勝つさ。」
「竜也、そう思っているところ悪いが、もしかしたら日本代表は試合を棄権するかもしれない。」
「は?」
「君以外の三人が重傷を受けた、だから三対三の試合を続けられない。」
大島の言う通りだった、俺は内心落ち込んだ・・・。
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