第8話
何だったのだろう。教室に戻るなり、さっきまで彼女と一緒に居た友達数人に睨まれた。
しかも隣の席のやつからはさんざんいじられるし、ホント俺の学校生活どうなっちゃったんだ。
「はあ」
俺は本日何回目かわからない深い溜息をついた。
溜息をついたところでさっきの彼女の話について考えを戻した。さっきの彼女は何か変だった。
何か思いつめているような、深刻そうな顔だった。3ヶ月で何なんだろう。彼女は3ヶ月後のあとになんて言おうとしていたんだろう。
俺は彼女の話のことで頭がいっぱいで致命的なことを忘れていた。今日は数学の課題があったのだ。すっかり忘れていた俺は急いで教科書とノートを取り出したが予鈴が鳴ってしまった。
仕方がないので俺はお説教を受ける覚悟で数学担当の教師のもとえ歩いていった。途中、彼女の友達(いやもはや取り巻きというべきか)に睨まれたり笑われた気がしたがあまり気にしなかった。
結局課題は再登校して提出すれば認めてもらえるらしい。俺は内心安心しながら席についた。
すると、タイミングを見計らったように彼女が近づいてきた。
「何?」
俺は満面の笑みで話しかけてあげた。満面の笑みで、ね。
「なんでそんな笑顔なの。ちょっと怖い」
「うるせえ。こっちはお前の取り巻きに睨まれたりしてんだよ」
俺は自分の人生の中でもうしないであろう笑みをけなされ、普段の態度に戻ってしまった。
すると彼女は嬉しそうに笑うとコソコソ俺に耳打ちをしてきた。
「どう、思い出せた?」
「思い出せたらすごいな」
俺は皮肉を込めて返してあげた。昨日あれだけ考えて思い出せなかったのにこんな短時間で思い出せるわけがないだろう。
「それで、本題は」
俺は気づいていた。今の話が本題ではないことを。彼女はそんなにバカではない。俺がこんな短時間で思い出せる男ではないことくらい知っているだろう。
「本題はですね、メアド交換しないかっていうことです」
「は、なんでお前と交換しなきゃいけないんだよ」
「だって、思い出したらすぐに教えられるでしょ」
「断る。第一学校で教えればいいことだ」
「ありがと!!!」
は?俺は断ったのにお礼を言ってきた彼女がよくわからなくて訝しげに彼女のことを見た。
すると、彼女から何かを渡された。なんだろうと思いながら受け取ると、渡されたものは俺のスマホだった。
「なんで持ってるんだよ。ていうか、どうやって盗んだ」
「え、屋上で話したときに落っことして行ったから」
「あのなぁ」
「というわけで、登録しておいたから」
そういうと、彼女は自分の席に戻ってしまった。俺は自分の携帯の中を確認した。すると未読メールが1件あったので確認してみた。
「はあッ」
送られてきたメールを見ると、彼女からだった。そういえばさっき登録しておいたと言っていた気がする。
どうやって俺のスマホのロックを解除をしたのかが気になるが、その前に削除してやった。
削除した途端彼女が恨めしそうにこちらを振り返ってきたが無視して机に突っ伏して寝た。
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