第8話 わがままはお好き?
◇◇◇
「そのことなんだけど……わたくしの母が隣国の第一王女であることはご存知ですわよね」
ミランダは、上目遣いをしつつちょっぴり言い辛そうに口ごもる。もちろんそんな表情も死ぬほど可愛い。
「実はね、わたくし、女王になるんです」
「……えっ!?」
「アリスラ王国では男女関係無く、王家の血筋の中で最も優れた能力を持つものが王になるの。女王であったおばあさまが亡くなるときに、次代の王の証を戴いてしまって。断れなかったのよね」
軽くため息をついたミランダに対し、オーベルトは真っ青になる。
「ま、まさかレオナルド様が持ち出した……」
「そう。そのまさかね。本来王冠にはめるべき国宝の宝石なんだけど王冠を他国に持ってくるわけにもいかないからネックレスに加工してもらったの」
「なんてことだ……」
それはアルボルト公爵も激高する訳だ。国際問題どころの騒ぎではない。
「だからね、オーベルトにはアルボルト公爵兼アリスラ王国女王の王配になっていただかなくてはならないの」
「そんなことが可能なのだろうか……」
「アリスラ王国は完全実力主義で王を選ぶから私達の子供が王になれるかは分からないわ。だから、アルボルト公爵家を潰すわけにはいかないの。このことはすでに両国の同意をとってあるから問題ないわ」
「なるほど……」
「わたくしが女王になっても、わたくしを支えてくださる?それとも、女の添え物みたいになるのはお嫌かしら?」
ミランダの言葉にオーベルトは思わず微笑んでしまう。
「いや、君はいつだって私の女王だ。私だけの女王で無くなることは残念だが君ほど王冠に相応しい人はいない」
「あなただったらそういってくれると思っていたわ」
花が開くように微笑むミランダをみて嬉しくなる。そう、いつだってミランダは完璧に美しいのだ。そしてその笑顔を守るためならどんな困難も乗り越えていけそうな気がする。
「でも……どうしてオーベルトはわたくしのことがそんなに好きなの?好かれているのは分かるけど、どうして好きなのかは分からないの。教えてくださる?」
可愛い顔をしてとんでもないことを言ってくる。そんなのは決まってる。
「君のすべてを愛している。愛さずにはいられないんだ」
「オーベルトって変な人!」
「へ、変!?」
「変よ。わたくし結構わがままなのに?」
「わがままなところも可愛いと思っている。むしろもっとわがままを言って欲しい」
「あと、結構泣き虫だし」
「知っている。学園で飼育されていたうさぎが死んだときも泣いてたな……今度からは遠慮なく私の胸で泣いてくれ」
「もしかしてあのあと大量のうさぎが我が家に届けられたのって……」
「め、迷惑だったかっ!?」
「いいえ。ふふっ、今でも大切に育ててますわ」
「そ、そうか、良かった……」
「大好きよ、ずっと一緒にいてね」
「ああ、君が望んでくれる限り共にいると誓う」
こうしてアリスラ王国史上最も偉大な君主として称えられたミランダは、最高の伴侶を手に入れた。彼は後に無敵の英雄と称えられる。オーベルトはいついかなるときも女王を立て、生涯に渡ってその剣と忠誠を捧げ続けたし、女王は彼の前でだけちょっぴりわがままを言うこともあったとか。もちろんそれはオーベルトにとって最高のご褒美だったのは言うまでもない。
おしまい
わがままはお好き? しましまにゃんこ @manekinekoxxx
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます