第46話
「そうよ。キラーも夢の世界のものよ。キラーとは異界のものでもある殺し屋のことね」
まるで、いや、確かに心を読んでいるのでは?
「夢の世界と現実?」
「そう。もう現実なるものが大部分。夢の世界へと沈没している証拠だわ」
「?……俺のことを七番目っていいますが、一体? 七番目って」
「簡単に言うと、七番目は、狂気と神秘の狭間。でね、古代の宗教ではしばしば太陽化する頂点で、狂気すれすれの危機的な体験なの」
「え?? は??」
「赤羽さんは、残念だけど、とても危険な体験をしているの」
「……気分はとてもスッキリしているんだ……幸運なのかな? 目が覚めた感じだ。……頭では何が何だかさっぱりわからないが……」
運転席で霧画はふーっと、細い息を吐いてから、
「昨日、調べた夢の世界に関する古い文献の話なのだけど。また、ウロボロスの話ね。太古の大勢のシャーマンは強すぎる夢の力を抑えるために、ウロボロスの背に大樹を植えたの。大樹は世界の中心とされ、それに登ることによって、神々の世界へ儀礼的に上昇をすることが出来るの。その儀礼的な上昇する力で、夢の力を抑えるようよ。そうね、蛇と木は不思議と親近性がとてもあるの」
「はあ。儀礼的って何ですか?」
蛇と木に親近感?
「簡単にいうと、儀礼的とは形式的のこと。つまり、神々の元で形だけの力を得るの。その力と、そしてウロボロスを眠らすことで夢の世界を抑えるわけ。それと、古代からの絵には、蛇の上に木が生えているものがあるのよ。私の読んだ本にもあるわ。大樹が世界の中心にあるのは、この世界が始った時、ウロボロスを封印するのにもっとも適していたからなの。つまり、その頃は南米が世界の中心だったの」
呉林が私の頭を助けてくれる。
「そして、ウロボロスをそのまま眠らせたのよ。でも、その蛇には意志があって、それで、今は悪いシャーマンがその意志を利用して(起こして)世界を滅ぼそうとしている。と、考えられるわ」
霧画は右折するために話を一旦止めて、
「ウロボロスの大樹は今でも南米にあるんですか?」
私は確認をしようとした。
「そうだと思うわ。ウロボロスの大樹は古い文献で、今でも南米にあるって示唆されているの。悪いシャーマンはウロボロスの大樹に何かしたのじゃないかしら。それと、南米のコーヒー豆もあるわ」
「姉さん。その話、メルクリウスの蛇と関係しているの?」
難しい話を楽に話している呉林である。
「そうよ。私も本で読んだだけだけど、それと同時にメルクリウスの蛇とも言うわ。そう両性具有の神よ」
霧画の話に、
「メルクリウスの蛇?」
私は壮大なスケールで、頭が一瞬どうかしてしまった。さっきの不思議な力も頭では到底理解するのは出来ないので尚更だった。
「つまり、メルクリウスは錬金術でいう両性具有の神のこと、太陽と月の両性具有でもあるの。そう夢と現実の神。メルクリウスの蛇(ウロボロスの蛇)は地球と同じぐらいの大きな蛇で、何十億年と自分の尾を呑み込んでいて、今では小さい輪のようになっているの。それをシャーマンはその蛇を起こし、尾を全て呑み込ませてから。最後に頭を殺害してしまうとかするんじゃないかしら。そうすると、当然、夢の世界と現実の世界が崩壊してしまうの。これは大変なことよ」
「……」
霧画の有難い説明は……チンプンカンプンだった。
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