趣味

にゃ者丸

趣味


 きっかけはなんてことない、ただ本が好きだった。それだけの事だった。


 世の中には色々な表現で世界が形作られている。


 文字とか、絵とか、色とか………動画、漫画とか。


 人にはそれぞれ自分の価値観があって、自分の思い描く世界がある。創作者っていうのは、誰もが自分の世界観を形にする表現者なんだってことなんだと思う。


 俺はただ、心惹かれたものに熱中しているだけ。


 文字という中身を、自分の型に押し込んで、はみ出た瞬間から新しい型を追加して、また新しい型をつくる。


 説明が難しいけど、伝えやすい言葉と言えば、あれ。


 綴られた文字を読み込んで、そこから脳内で世界を妄想する。


 想像するって言い方の方がカッコいいし、表現としてはそっちの方が好い印象を抱けるのかもしれない。


 でも、俺には妄想って言った方がしっくりくる。


 頭の中で、文字で表現された世界を妄想する。これは、こういう景色で、あのキャラクターはこんな感じの容姿。それで、戦闘シーンはこう………。


 面白いものを見付けた時、興奮が収まらないのと同様に。俺には、面白い世界観を見付けた時、妄想が止まらない。


 ダムが決壊するみたいに、楽しくて楽しくて堪らない。


 脳が糖分を欲して、眠気と怠さと気持ち悪さが一気にやってくる感覚が、なぜか心地好い。


 自分の妄想を、俺は勝手に中二病なんて理由をつけて、嫌っていた時期もある。でも、後から気付いてみれば、単純に興奮がそのまま身体に現れていただけなのだと理解できる。


 誰だってそうだろう。容姿の良い人を見付けた時、自然と目を惹かれるように。接戦を繰り広げる、武道の試合に熱中して見入ってしまうみたいに。


 俺は妄想に視野を奪われて、感情のままに身体が勝手に動いてしまっただけなんだと。


 こういう風に過去を振り返って自分を分析してみると、子供の頃の自分がそうだったんだと、何だか微笑ましく思える。


 ただのぼうっきれが勇者の剣で、布きれを結んだだけのマントは、勇者の鎧で。

 あの狭い空間は、モンスターの徘徊する危険なダンジョンで。

 男友達は勇者の仲間で、女の子はお姫様。


 そんな風に、自分達で妄想したものを、身体で表現していただけなんだ。想像力っていうのは、考える力の一つ。


 学者の言った事を自分なりに解釈すれば、俺の妄想もそういう事だろう。


 毎日、毎日、飽きもせず頭の中で物語を妄想して、夢を見るように妄想に熱中して、アニメを見るみたいに楽しんでる。


 妄想………それを形にする人が、なんて言われているのか知った時、震えた。


 クリエイター。創作者。創る人。


 妄想を形にして、何かを創る人。


 世の中に形を残したいと思うのは、人間の性みたいなもんなんだと思う。


 ある時、Web小説という存在を知って、俺は誰でも小説を書いて、それを誰かに呼んで貰えるという事を知った。


 無邪気に喜んだよ。だって、俺は俺の考えた妄想を、誰かに伝える事ができるんだって。俺の妄想で、顔も知らない誰かを楽しませる事ができるんだって。

 本気でそう思ってたから。


 思えば、小説を書こうと思ったのは、我慢できなくなったからだろう。


 クリエイターというものを知り、何かで自分の好きなものを形に残せることを知り………俺は、自分の世界を描きたい衝動に駆られてしまった。


 自分の妄想を形作るのに小説を選んだことに、特に理由はない。


 ぶっちゃければ、一番お手軽に作れそうだったから。絵を描く事は苦手だし、漫画を書こうにも、道具を買うお金が無かった。

 だから、金がかからないもので、何とか自分にできそうなものが、小説だっただけ。


 でも、俺が好きなのは小説だし、何より活字中毒みたいなもんだ。


 今でもお気に入りのWeb小説が書籍化されたら、必ず買いに行ってるし、そこから更なる感動を味わいたいと思い、続巻されたら続けて買いに行く。


 そんぐらい小説が好きなんだ。


 小説を書き始めてネットに投稿し、その作品に感想や応援コメントがつくと、飛び上がるくらい嬉しかった。


 作家病なんて言葉を、とあるアニメで知った時、俺は作家病なんだって素直に納得した。


 小説を書くことのきっかけは、人それぞれだろう。


 俺は妄想を形にしたかったっていうのがきっかけで、今では俺の妄想で誰かが興奮して欲しいっていう考えになってる。

 変態じゃないです。違います。気持ち悪いってうのは自分でも分かってるから指摘しないで。


 俺の作品で、俺の描いた物語で楽しんで欲しい。


 それが、俺が小説を書き続けている理由。


 読んでくれる誰かがいるっていうのは、幸せなんだと思う。そこから、読者がファンになってくれたら、もっと幸せになって。


 幸せを積み重ねながら、幸せに支えられながら、小説家っていうのは物語を描いてるんかな。


 なれるなら、小説家になりたい。印税で好き勝手に妄想の糧を買いまくって、それでまた面白い作品を作りたい。妄想が膨らむのと同時に欲が芽生えてくる。


 欲深くて良いじゃない。むしろ欲がある事は健全なのだよ。生きる活力になるんだから。何かを続ける原動力にもなるんだから。


 なので、今日も俺は欲張っていこうと思う。


 書いて、書いて、書きまくって。どんどん妄想してやる。


 今更感が凄いけど、俺って変態なんだろうな。


 猛烈に書きたい衝動に駆られる時って、頭痛がして喉からせりあがるような気持ち悪さと、眠気と怠さに襲われた時なのよね。


 そうそう、ちょうど妄想しまくった事後。


 賢者タイムだよ。もうはっきり言うわ。



 さてと、俺の趣味を改めて言うのなら、それは一つだろうね。



 物語を堪能したい。それだけ。



 あれこれごちゃごちゃ言ってきたけど、結局、俺が言いたいのはそこ。


 形になった妄想を、俺が堪能したい。誰かの妄想が形になった物語を堪能したい。


 うん、もう変態で良いや。諦めの境地じゃ。



 締めくくりますかね。



 これを最後まで読んでくれたあなたは、どんな妄想が好きですか?


 違う。いや、違くないけど言い直す。



 どんな物語が好きですか?ちなみに俺は非日常系が好みです。


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