「むぎゅう」


「ん?」


 私の左足。なんか、左足が。

 しゃべった?


「んむぎゅう」


 彼が。

 彼がいた。

 私の左足に調伏させられている。


「よいしょっ」


 引っ張り出して。

 とりあえず。


「あむ」


 手首の匂いを確認してから、中指を噛んだ。

 味がした。


「中指。好きですね?」


 ねぼけながら、彼が喋る。


「わたしのお気に入り。わたしをいつもよろこばせてくれる。わたしの」


 わたしだけの。


「ねえ。これ」


 夢かな。


「うあ」


 彼が寝返りをうったので。わたしが下敷きになる。


「おもたい」


「夢です。おやすみなさい」


「おもいおもいおもい」


 彼の、温度。

 重たい。

 夢なら、重たくないよな。

 ここは。

 夢じゃない。

 中指を味わいながら、彼の体温を感じながら。

 また、眠るかもしれない。

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真夜中の散策、早朝の体勢 春嵐 @aiot3110

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