正夢

第1話

…ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ、ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ————

目が覚めるといつもの風景、いつもの部屋。

今日は少し肌寒い。

肌の触れ合った温かさが次第に冷めて 手を握った感覚も消えてゆく。

それはもう儚く。

あぁ、そうだ これは夢なんだ。

現実とはかけ離れた幸せすぎる世界から目覚めた私はやるせない虚無感を抱えながら今日もこの世界を生きる。

片思いをしてもうすぐ5年。

手の届かない存在の君を好きになった私。

ある日 ある瞬間、ふいに惹かれてしまう何かに出逢えるんだから人間って面白い。

私にとってのそれは 紛れもなく君だった。

周りからはもういい加減やめたら？と投げかけられることもある。

けど、私は君を忘れることなんかできない。

そんな自分に少し酔いしれながら 叶わない恋に涙を流す日もあった。

出逢う前の私に戻れたら楽になれるのかな？

でもきっと 君を知らないまま今日まで生きていたら私はこんなに強くなれなかっただろう。

ただ君を思いながら私は今日も君の幸せだけを願う。

今日も明日も何十年たってもきっと…。