バーベキュー

「いいかー野郎どもー?今日はカンパイなんて要らない!焼けたら肉をくえー!」

「「「おおぉぉぉっ!!!!」」」


 優斗たちが食べているのはスーパーで買ってきたそこそこの肉だった。しかしこの人数だ。焼肉屋に行って飲み食いするよりは断然安上りである。


「どーだ?飲んでるかー?」

「昨日潰れた優斗は勘弁してください」

「別にアルハラしてるつもりはないさ。楽しむことが一番だぜ」

「朝起きれなかったけど優斗、食べれるか?」

「うん、とりあえずスポーツドリンクと焼きおにぎりを食べるよ」


「優斗さんの焼いてるおにぎりおいしそうですね?」

「わあ、ほんとだぁ~」

「昨日のご飯の残りだけどね。去年の教訓を活かして中まで火が通る大きさにしたんだ」

「最初モチかな?って思いましたもんその大きさ」

「味噌の香りが香ばしくてたまらないです」

「焼こうか?」

「「「お願いします」」」

「何人いるの!?」


 優斗が用意したおにぎりやタレでは足りず、急遽追加分を作ることになった。優斗は焼きおにぎりを2つを口にし、その作業をすることになった。どうせ脂が強いものは今食べれない、と思っていると少し体調が戻ってきた。


「ふぅ。これだけ回ればあとはこのくらいで大丈夫だよね?」

「おつかれーなんか取ろうか?」

「焼きマシュマロしたいから取ってくれる?」

「あー焼きマシュマロうまいよなー。表面の硬いところとかマシュマロと別モノだもん」

「去年初めて知ったよね」

「やっぱバーベキューはいいよな」

「うん」

「「わっはははははっ!!」」

「酒を飲んだ先輩たちがあんなにも恐ろしいなんて今年知ったけどね」

「…………」

「誕生日って12月だったね?」

「おい、やめろ!」

「あははっ」


 サークルメンバーたちのバーベキューに対する意気込みは相当なものだった。年に数回のためにこの人数のセットを用意した。事前の仕込みも何種類かタレを用意し、買ってきた肉に漬け込んだ。仲間たちで準備し共に食べる、最初から最後まで彼らにとって充実した時間だった。


「あー食い過ぎたー」

「肉はいいけどせいぜい月に2回でいいよな」

「それなっ」

「1年生はすっかり馴染んだようね」

「うんうん」

「なにも言わなくても動いてくれるいい子もいるしね」

「うちらは安心してお酒を楽しめるってもんだね」

「なに言ってるの?あたしたちは今日帰るでしょ?今飲んでるのを空けたら片付けするわよ」

「えー」


 昼から始まったバーベキューは2時間経ち、そろそろ片付けの時間だ。サークルメンバーは車で来ているので1泊、2泊、長期滞在組と帰りを分けることにした。優斗は今回の合宿を企画したこともあり2泊組に入っていた。


「今夜は寝床が広いぞぉ~」

「昨日は悲惨だったからなぁ」

「雑魚寝に代わりはないけどな」

「まあそれが合宿ってもんよ」

「夕飯は各々適当にって感じで」

「酒も適当って感じで」

「それなっ」


 この合宿は事前に決めた予定は日にほとんどない。作業の振り分けはきちんとするが自由時間はまさしく自由だ。お腹いっぱいのメンバーたちはダラダラしていた。ちなみに去年の長期滞在組は6日滞在していた。都会の暑さとは違い、この別荘は過ごしやすく、気分で長居してしまった。


「片付いたしボードゲームやろうぜー」

「いつものメンツはバラさないとな」

「先輩たち、酒が入ってるからって悪ノリはいけませんよ?」

「分かってるって。俺たちが絡むのは酔っ払いだけだっつーの」

(合宿では絶対にお酒は飲まないようにしよう)


「あんまり慣れない子たちもいるから最初は見学組を作ろうか?」

「そうだな。4人、4人でゲームして1年の3人は見学ってことで」

「じゃあこれとこれにしようか、見た目からシンプルだし」


「見ながら説明するから後ろから見ててな」

「はい」

「ボードに大きさの駒があるんだけどそれを引き抜いてくゲームだ」

「大きい駒ほど点数が高いぞ」

「じゃあ大きいのを取ればいいってことですか?」

「間違ってないけどそれじゃあゲームにならないだろ?」

「点数が入るのは駒を引き抜いてもボード全体が動かなかった時だけなんだ」

「まっ、とりあえずやってみるよ」


 優斗たちサークルのメンバーはこのゲームを何回かやったことがある。ゲームは手番が1回交代の将棋崩しのようなシンプルなものだ。1年生たちは先輩たちがゲームをしながら会話をするのを不思議そうに見ていた。ルールやゲームの面白いところは分かったが、なぜ彼らがゲームを進めながら会話ができるのか不思議だった。ゲーム自体は20分も掛からずに終わった。


「はい、おわり」

「あとは駒の点数を数えて勝った人を確認するよ」

「おっ?俺の勝ちじゃね?」

「圭吾先輩おめです」

「軽いなぁ」

「どう簡単でしょ?」

「とりあえずやってみます」

「うん、楽しんでね」


 1年はそれぞれ見学していたゲームに入った。1年生が入った分人数が抜け、別のゲームを優斗と日菜子、他2人ですることになった。この合宿で優斗は日菜子と他のサークルメンバーと同じように接することができるようになった。


「あーこのゲームか」

「まず席決めからね、サイコロ振って」


 彼らが今からプレイするゲームはゲーム盤に持ち駒となるブロックを置いていくゲームだ。1回ブロックを置いたら手番が回り、ブロックをできるだけ消費したプレイヤーが最も得点が高いゲームだ。


「やっぱ一番最初のプレイヤーは有利ですよね?」

「と言いながら2人で俺の侵攻を邪魔をするな!」

「妨害も重要なゲームだと性格の悪さが出るよね?」

「心配するな、俺を含めて4人とも性格悪いから」

「「ははははっ」」


 アナログゲームの魅力は他のプレイヤーへの干渉ができる分、駆け引きが多くなることだ。他人の性格が出るからより盛り上がる。メンバーたちは皆ゲームを大いに楽しんだ。


「もうそろそろ温泉と買出しに行こうか?」

「こっちもちょうど終わるぞ」

「まあ軽いゲームだし、待っても大したことはないだろうからね」

「いやーそれにしてもやっぱまだ肉が腹に残ってるなぁ」

「そーだな、夕飯は各々任せるって方針で」

「了解」


 温泉に行くのが陽が沈む前のこの時間になったのは理由がある。サークルメンバーの多くは夕暮れの入浴が好きなためだ。2日目の夜が始まる。

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