二日酔いで謝ります
「うっ……頭いたい……」
(昨日はひどい目にあった)
とはいえ別に優斗は無理やり酒を飲まされたわけではない。ただ缶の中身が減った時に『はい、おかわり』とめざとくおかわりを渡されただけ。ただしその表情は歪んでいたが。
「もう9時か、流石に暑くなってきたし、いつまでも寝てるわけにはいかないよね」
サークルのメンバーは各々行動をしていた。近場で散歩する者や温泉に行く者もいた。逆に朝から積極的に動かない者もいる。
「おー優斗くん。復活したね」
「……望海先輩」
「初めてだからね。上手くできないこともあるよ」
「誤解を産む発言はやめてください。ただの二日酔いですからね」
「そうだよな。優斗は童帝じゃないよな、歴戦の槍使いだよな?」
「うん。先輩たち、大人しい子たちがいないと思って、朝からぶっ飛んだ発言をしないでください」
「まーそういうなって。こういうまったりしてる時にイジりがいがある奴がきたら、ねっ?」
「ねっ?じゃないですよ。先輩たちゲームやってるんですから、大人しくそちらに集中してください」
「ゲームは雑談するためにあるもんだぞ?」
「軽いゲームは世間話をするにはちょうどいいからな」
「優斗くん、ヤってく?」
「望海先輩、いい加減その悪そうな顔やめてくれません?」
先輩たちはボードゲームをしていた。ボードゲームと言ってもルールが簡単なものから複雑なものまで多種多様なものがある。
このサークルのメンバーは他のメンバーが入りやすいように、動画でルールや面白さが分かりやすいものを選んで買ってきている。昨日も優斗と別のテーブルで飲んでいたメンバーはボードゲームをしていた。旅先や学内の休憩スペースでメンバーがボードゲームで遊ぶのは定番になっていた。
絡むのが好きな先輩たちから優斗は逃げ、とあることをするために自分の荷物を漁った。
「あっ、やっぱりきてる……これは僕が完全に悪いよね」
(メールが7件、しかもいちばん新しいメッセージは僕のこと凄く心配してるし)
『キャンプの定番といえばカレーだよね。ってキャンプじゃないかぁ』
『優斗くん。寝ちゃった?いつものようにおやすみって言ってくれると嬉しいな』
『なにかあったの!?連絡して、心配でしょうがないよ』
優斗に初音からのメールがきていた。その内容を確認すると夜には恋人らしいメッセージが入っており、朝には優斗の安否を心配する内容のメッセージが入っていた。優斗は慌ててなにも心配ないことをメールで送ることにした。
『ごめん、ちょっと返信できなくて。今回は完全に僕が悪かったよ』
「ピリリリリッ、ピリリリリッ」
メールを送った直後、電話が鳴った。優斗は突然のことに驚き、とっさに電話を取る。優斗の起きたてで、なにも口にしていなかった。
「優斗くん」
「ほんとごめん」
「なにか悪いことをしたの?」
(淡々と聞いてきて怖いなぁ)
「そ、それなんだけど、寝ちゃってて」
(あれ!?声がうまく出ない!?)
「なにがあったのか聞いてるんだけど?」
「お酒を飲んで、そのまま潰れてました」
「たのしかった?」
「楽しかった、です。でも調子に乗って飲み過ぎて、今は後悔してます」
「敬語、やめよ?」
「ご、ごめん」
「謝らなくていいよ」
「今晩は絶対メールするよ」
「うん」
「写真何枚か撮ってあるから、帰ったら見せるよ」
「うん」
(どうすれば機嫌が直るかな?)
それから優斗と初音は昨日のことを話し合った。初音の祖父が亡くなり、葬儀などでそちらにもう3日ほど留まることになった。彼女はそのことを割り切っており、優斗と会えない寂しさの方が大きいと語った。優斗は初音がいつもの明るさがなく、何か違和感のようなものを感じた。
「おーい優斗ー。もうそろそろバーベキューの用意するぞー」
突然外から呼び声が聞こえた。時計を確認すると、1時間近く初音と通話していることに気が付く。
「ごめん。呼ばれてるからもうそろそろいい?」
「うん、ごめんね。あたしこそ長くおしゃべりしちゃって」
「また今夜にでも電話するね」
「うん」
優斗は電話を切った。1時間も通話をするのは間違いなく悪影響だった。外からバーベキューの準備をするメンバーの声が聞こえてきた。
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